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映画に関する短いエッセイとその他

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

「熱情と敬意と言葉」の討論会

2020年、日本、豊島圭介監督

1969年5月13日、東大駒場キャンパス900番教室で三島由紀夫と東大全共闘との討論会がおこなわれた。会場には1000人を超える学生が集まった。

 

当時の学生運動や社会状況、三島の人物像が紹介される。50年後の討論参加者たちの回想と知識人たちのコメントがあり、とても分かりやすいドキュメンタリーだった。ただ討論内容についての詳細はなく、大人(三島)と若者(全共闘)との対話という印象が残った。

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秩序を守ろうとする保守と民青(共産党の青年組織)が全共闘と三島の共通の敵だった。日本の民衆の底辺にあるもの、それを三島は天皇といい、天皇と自己を一体化させるところに美があると言う。しかし天皇に対するアンビバレントな心情も抱えていた。

 

討論会は男の世界であり、女性の視点はなかった。50年前、女性はまだ表舞台に立つことも発言も少なかった。

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討論は相手を叩き潰すことが目的ではなく、誹謗中傷もなく、お互いに敬意をもって行われた。言葉の有効性について話される。

政治論ではなく、サルトルなどが引き合いに出されるような人間の存在についての議論が多くみられた。全共闘の若者らしい観念論が目立った。

 

終了後、三島は愉快な経験だったと語った。確かに笑いがあり、愉快な討論会だった。f:id:hnhisa24:20220110084826j:plain

かつて三島は「日本は世界の静かな中心であれ」と言い、軍事力や経済力とは違う精神性を主張した。

 

討論会の一年半後、三島は自決した。45歳だった。全共闘運動も急速に消滅していった。50年が経ち、三島も全共闘もいなくなったが、900番教室は今も存在する。