夢は忘れた記憶
2018年、中国、フランス、ビー・ガン監督
「凱里ブルース」のビー・ガン監督の二作目。前半は2Ⅾで後半は3Ⅾだが私は全編2Ⅾ版で鑑賞した。
ルオ・ホンウは父が亡くなり12年ぶりに故郷の凱里に戻る。ルオは忘れられない女性の面影を追い求めて夢と現実の間を彷徨する。
彼は映画館で寝込んでしまい夢の世界に入ってゆく。ここから3Ⅾの60分のワンカットシーンが続く。気がつくと洞窟の中を歩いている。洞窟の中に住んでいる少年と出会う。外への出口を訊くと、オレと卓球をして勝てば案内すると言う。ルオは勝ち、少年のスクーターに乗って洞窟内を走るといつしか地上に出る。
ルオはビリヤード場に入る。そこで凱珍という女と知り合う。二人はビリヤード場に閉じ込められるが、卓球のラケットを回すと、二人は空を飛んでゆき地上に降り立つ。
地上では突然、馬が暴れて去ってゆく。歌謡ショーのコンテスト会場ではイカレ女が松明をかざして広場を歩き、男に会いに行く。男は逃げようとするが、ルオが拳銃で脅し女を連れて行くように言う。
女になぜ男と一緒に行くのかとルオが訊くと「苦労ばかりの人生だった。男はハチミツをもっている」と答え、女はお礼に腕時計を渡す。女はルオが幼い頃、養蜂家の男と駆け落ちした母親だった。
ルオは歌謡ショー会場の楽屋で凱珍と会い、腕時計を贈る。凱珍は「時計なんか贈るものではないわ、永遠の意味よ」凱珍はルオに花火を贈る。ルオは「花火を贈るものではない、儚いという意味だ」
廃屋の二人「キスをしてもいいかい」「家が回るならいいわ」やがて家が回り出す。楽屋では二本の線香花火がパチパチと火花を放っている。まだ夜は明けない。
継ぎ目のない60分ワンカットシーンは夢そのもので、不思議な魅力にあふれた映画だ。