自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

趣味の問題 2000年

傑作になりえたかもしれない異色作

フランス、ベルナール・ラップ監督

物語はある事件関係者への判事の事情聴取で展開してゆく。

 

フレドリック・ドゥラモンは大手の化粧品会社の社長だった。高級レストランのウェイター、二コラが微妙な味を的確に言葉にできることを知る。

美食家のフレドリックはチーズと魚にアレルギーがあり、二コラを「味見役」として高給で雇う。しかしそれは単なる「味見役」ではなかった。

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フレドリックは異常なほどの潔癖症だった。研修という名目で10日間の断食が行われ、二コラは服装も食事の好みも容姿もフレドリックに似てくるように改造されてゆく。

フレドリックは二コラを僻地に滞在させ、自分と同じ孤独を味わわせる。フレドリックがスキーで骨折すると二コラは自分の脚の骨を折り、痛みを共有しようとする。

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二コラの恋人ベアトリスは不安になり「罠に落ちないで」と言うが、二コラはもう引き返せない心理状態に陥っていた。

 

理不尽だと思いながらも二コラはフレドリックから離れなくなり、支配されてゆく。フレドリックはもう一人の自分をつくり出そうとしていた。

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フレドリックもまた二コラと出会わなかったら「私は自殺していただろう」と言い、二コラを愛しているともいう。それは同性愛というものではなく、自己愛だった。

二人は相互依存の関係になりどちらも離れられなくなる。

やがて事件が起こる。

 

心理サスペンスであり、サイコスリラーであり、傑作になりえたかもしれない異色作だった。