なぜ「ニガー」が必要だったのか
黒人公民権運動家のメドガー・エバース、マルコムⅹ、マーティン・ルーサー・キングの3人が暗殺された。
彼らと親交のあった公民権運動家で作家のジェームズ・ゴールドウィン(1924~1987)の未完の原稿をもとにしたドキュメンタリー映画。
テレビ番組で「黒人の市長も生まれたし、スポーツ界や政界にも進出しているのに、なぜ黒人に希望がないのか」という質問に、ゴールドウィンは「希望はない、一番の問題はこの国そのものだ」と答える。後年、黒人の大統領も誕生したが現状はあまり変わっていない。
またリベラルな知識人は「なぜ肌の色に拘るのか」と融和を主張する。しかし問題はそこにはない、なぜ「ニガー」が必要だったのか。そこから考えるべきだとゴールドウィンは言う。
また彼は「私が出会ったほとんどの白人は黒人に敵意をもっていない。ただ無知なだけだ」「白人は夢をみたまま一生を過ごせる」「黒人にとってこの国は安全ではない」「黒人は怒りを持ち、白人は恐怖を感じている」
1959年の映画「悲しみは空の彼方へ」は黒人でありながら見た目が白人のような少女の物語だった。彼女は黒人の母親を恥ずかしく思い、たとえ「模倣の人生」であっても白人として生きようとする。肌の色の違いが人を大きく変えてゆく。
白人は建国時から労働力として、また侮蔑の対象として黒人を必要としていた。奴隷制はなくなったが、侮蔑の感情は遺伝子のように残った。
黒人は白人のために存在するのではない。だから彼らは言う「私はあなたの二グロではない」と。