自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

行き止まりの世界に生まれて 2018年

嘘のない真実の物語

アメリカ、ビン・リュー監督

イリノイ州、失業者の町ロックフォードは犯罪の四分の一が家庭内暴力だという。スケボー仲間の貧乏白人ザック、黒人キア、中国系アジア人ビンの12年間を追ったドキュメンタリー。

ビンが撮っていた仲間内のビデオがいつの間にか一本のドキュメンタリー映画になった。

彼らにとってドキュメンタリーを撮ることがどこかセラピーになっていた。それぞれが問題のある家庭で育った3人はスケボーだけが痛みを癒してくれるものだった。

 

ビデオを撮り始めた12年前は少年だった3人はいつしか大人になり、それぞれの道を歩んでゆく。

ザックは恋人ニナと結婚して息子を授かるが、いつしか言い争いが絶えず、別れてしまう。ニナと別れたザックは「自分の敵は自分」と思い、ニナは「誰かの娘、誰かの妻、誰かの恋人、誰かの母、一体、自分自身は何者なのか」と悩む。

 

キアは嫌っていた父親が亡くなってからその愛に気づく。その父親から今度生まれてくるときも黒人を選べと言われる、なぜなら「黒人たちはいつも問題に立ち向かっているから」だ。

 

ビンはビデオのインタビューで母親に訊く「俺が継父から暴力をうけていたことを知っていたのか」と。事実を知った母親は「できることならやり直したい」

 

ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、「それでも人生はつづく」と思わせる作品だった。