自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

モロッコ、彼女たちの朝 2019年

初めてのモロッコ映画

ロッコ、フランス、ベルギー、マリヤム・トゥザニ監督

カサブランカ、未婚の妊婦サミアは大きなお腹を抱えながら、仕事も泊まるところもなく、旧市街の路地で仕事を探していた。

幼い娘と二人で暮らすアブラは小さなパン屋を営んでいた。夫が亡くなってからアブラは心を閉ざし、好きな歌を聴くこともなかった。サミアはその小さなパン屋で働くことになる。

下町の息遣いや日々の暮らしやパン粉を捏ねる姿に惹きつけられる。それらが「光と影」の絵画的な映像で描かれる。

やがて子供が産まれるが、サミアは名前もつけないで、すぐに養子に出す覚悟だった。初めは頑なに赤ちゃんを抱こうともしなかったサミアだったが、授乳して、小さな手の指と足の指に愛しく触れ、アダムと名付ける。

しかし養子に出す以外に道はなかった。

ロッコでは婚外交渉と中絶は違法であり、未婚の妊婦はある意味「犯罪者」だった。故郷に戻っても疎まれるだけだった。 産まれた子どもは周囲から「罪の子」と虐げられ、社会保障などあらゆる権利を満足に受けられず、確実に厳しい人生を強いられる。

「私と一緒だと不幸になる、養子になれば別の人生がある」

 

サミアは子守唄を歌う「♪ママ、お願いだから空を飛ばせて・・あなたはまだ子供だから巣の中にいて・・大きくなれば空を飛んでいきなさい、鳥と一緒に・・♪」

 

私たちはハッピーエンドを願うが・・・・でも鋭い刃が心に突き刺さるようないい映画だった。