初めてのチュニジア映画
チュニジア、フランス、ムフィーダ・トゥラートリ監督
チュニジア、歌手のマリヤは自分を実の娘のようにかわいがってくれた皇太子のシド・アリが亡くなったことを知り、10年ぶりに王宮を訪ねる。
そこにはもう1950年代の栄華はなかった。彼女は過去の出来事を回想する。
マリヤの母ケディージャは10歳のとき、王宮に売られて、それ以来、王宮の外へ出ることは許されず、召使として働いてきた。そしてマリヤを産んだのだった。マリヤの父親は誰だかわからなかった。
王宮で暮らす召使や炊事係の女たちには掟があり、それは沈黙だった。自分の身に何が起ころうとも沈黙するしかなかった。
そして今、歌手となったマリヤも妊娠しており、男に堕胎するように言われていた。イスラム文化の中で生きる母と娘、二代にわたる女性の哀しみが描かれる。
マンドリンのような楽器ウードの音色にのせて流れるチュニジアの歌が心に残った。それはどれも恋の歌だった。当時の女たちの希望は恋だけだった。