後片付け
ポーランドの女性詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカ
「終わりと始まり」
戦争が終わるたびに
誰かが後片付けをしなければならない
物事がひとりでに
片づいてくれるわけではないのだから
誰かが瓦礫を道端に
押しやらなければならない
死体をいっぱい積んだ
荷車が通れるように
誰かがはまりこんで苦労しなければ
泥と灰の中に
日本では戦争に行った人も、その後片付けをした人もほとんどいなくなった。
茨木のり子「わたしが一番きれいだったとき」
わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達がたくさん死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
後片付けをしていると「青空なんかが見えたりした」のかもしれない。