自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ミュージックボックス、1989年

戦争犯罪と法廷劇

アメリカ、コスタ=ガヴラス監督

第二次大戦後、アメリカにやってきたハンガリー移民のマイク・ラズロは37年間、地道に暮らしてきた。

ところがハンガリー政府は40年前のユダヤ人虐殺の犯人としてアメリカにマイクの引き渡しを求めてきた。

彼の娘で弁護士のアン・タルボットが法廷での弁護に立つ。アンは父親の無実を固く信じていたが、検察側の証人たちが次々と証言する虐殺のあまりの凄まじさに呆然とする。

当時のハンガリー警察官だった男の残虐非道さに法廷は言葉を失った。その男がマイクだというのだ。

裁判は二転三転してゆくが、検察と弁護側、どちらにとっても決定的な証拠がなかった。

新しい証言を求めて裁判官、検察官、弁護士のアンはハンガリーに飛び立つ。そしてブダペストの病院にいた証人から決定的とも思える証言を得ることができた。

 

しかしアンはどこか釈然としなくて、父を脅迫していた男の姉を訪ねる。そこで男の遺品であるアメリカの質札を渡される。アンはアメリカに戻り、質屋で品物を受けだす。それはミュージックボックス(オルゴール)だった。真実はその中に隠されていた。

 

ミステリータッチの脚本の巧みさに引き込まれ、明かされた真実の重さにたじろいでしまう。罪という言葉では言い尽くせない狂気の過去を描いた物語だった。