デュークが伝えたかったこと
映画「僕のワンダフル・ライフ」はレトリバーの子犬が、飼い主のイーサンに会いたくて生まれ変わりを何度も繰り返すという物語。
私と「デューク」との奇跡
クリスマス、21歳の女が泣きながら歩いている。歩きながら女は涙がとまらなかった。「デュークが死んだ。私のデュークが死んでしまった。私は悲しみでいっぱいだった」
デュークはグレーの目をしたクリーム色のむく毛の犬だった。デュークはキスがうまかった。そして横顔がジェームス・ディーンに似ていた。
電車の中でも涙がとまらない。19歳ぐらいの男の子が席を譲ってくれた。それでも泣き止むことができなかった。
その少年と喫茶店で珈琲を飲み、プールで泳ぎ、美術館でイタリアの宗教画とインドの細密画を見た。そしてデュークも好きだった落語を聴いた。でもデュークはもういない。
少年が「今年ももう終わるなあ」「今までずっと、僕は楽しかった」と言った。女は「そう、私もよ」
なつかしい、深い目が私を見つめた。そして少年は私にキスをした。彼のキスはあまりにもデュークのキスに似ていた。寂しそうに笑った顔がジェームス・ディーンによく似ていた。
「僕もとても、愛していたよ」「それだけ言いにきたんだ。じゃあね。元気で」と少年は去っていった。
私はそこに立ちつくし、いつまでもクリスマスソングを聴いていた。