自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

少年時代 1990年

軍歌以外の歌を知らない時代

日本、篠田正浩監督、脚本山田太一、撮影鈴木達夫、美術木村威夫

昭和19年、夏、東京の小学5年生の風間進二は富山の伯父のもとに疎開する。風泊(かざどまり)の戦前の駅舎や日本家屋や雪景色が美しい。

進二はすぐに地元のガキ大将で級長の大原君と友達になる。学校で大原君に逆らうものは誰もいなかった。ところが二人だけの時は優しいのに、学校ではなぜか大原君は進二を無視し、子分のように扱う。大原君の矛盾した態度が進二には理解できなかった。

 

進二がクラスの生徒たちに巌窟王快傑黒頭巾怪人二十面相などの物語を話すと、みんな夢中になって聴いている。

大原君と進二は隣町の写真館で記念写真を撮る。

やがて副級長の須藤が復学してくる。須藤の策略で大原君はクラス中から仲間外れにされ、進二も須藤の味方になる。大原君は何も言わずに耐えていた。少年たちの世界には大人とは違うルールがあった。

 

やがて終戦を迎え、進二は東京に帰ることになる。列車の中で進二は大原君が大切な友達だったことに初めて気づく。そして列車を追いかけてくる大原君に大きく手を振る。

井上陽水の「少年時代」が聴こえてくる。「♪夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれにさまよう 青空に残された 私の心は夏模様・・・♪」