自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

その壁を砕け 1959年

芦川いづみの可憐さ

日本、中平康監督、脚本新藤兼人、撮影姫田真佐久、音楽伊福部昭

自動車修理工の渡辺三郎は念願の車を買った。新潟で看護婦として働いている恋人のとし江と結婚するために、東京から車を走らせた。

深夜、レインコートの若い男を乗せるが、男は橋のたもとで降りた。その後すぐに三郎は駅前で警官に逮捕される。郵便局長が鉈で殺され、その妻が大怪我をしていた。

面通しで三郎はその妻から「犯人はこいつだ」と言われ、警察に連行される。三郎は無実を訴えるが強引に犯人として起訴される。

 

恋人のとし江は敏腕の鮫島弁護士に弁護を依頼する。裁判長は警察の捜査に疑念をもち実地検証が行われる。そこで意外な真相が明らかになる。

 

今の時代からみればずいぶん緩いサスペンスだが、100分のなかに警察の捜査、冤罪、法廷劇などがコンパクトにまとめられていた。そしてストーリーは思わぬ方向にすすみ、一人の田舎警察官が真相を追う展開になってゆく。

砂埃の舞う未舗装の道やほとんど通行人のいないのんびりとした町の風景が時代を思わせた。最近の日本映画のようなヒリヒリしたところがなく、ゆったりとした時間が流れていた。

サスペンスでありながら、なんだか懐かしい文芸調のドラマのようだった。