自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

戦場のブラックボード 2015年

戦争と避難民たち

フランス、ベルギー、クリスチャン・カリオン監督 音楽エンニオ・モリコーネ

1940年、ナチスドイツの侵攻で北部フランスの小さな町の住民は市長と共に南部の町ディエップに向かって疎開してゆく。家も財産もすべて捨てて車や馬車や徒歩で町を去ってゆく。

その町で素性を隠して暮らしていたドイツの反体制派のハンスは不法滞在で投獄されていた。8歳の息子マックスは市長、女教師スザンヌたちと避難した。

ドイツ軍の侵攻のどさくさに脱獄したハンスはマックスを捜すが見つからなかった。しかしマックスは黒板(ブラックボード)に自分たちの行き先を書いていた。ドイツ軍はフランス南部に迫ってゆく。

メインは父親が息子を捜す物語だが、それよりも町や村の人たちが戦火を逃れ、命からがら、車や馬車や自転車や徒歩で疎開してゆく姿に惹きつけられる。途中の道では多くの避難民が虐殺されていた。避難民は今もいる。

爆撃や銃撃戦だけが戦争ではなく避難民たちの姿そのものが戦争であり、歴史だった。映画のオープニングに映し出される当時の避難民たちの実写フィルムが戦争の真実を伝えていた。

 

感動作、名作、傑作というタイプの作品ではないが、胸を締め付けられるような良作だった。