自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

非情の罠 1955年

67分のフィルムノワール

アメリカ、スタンリー・キューブリック監督

マンハッタン、ペンシルベニア駅で誰かを待つ男の回想から始まる。

試合に敗れた29歳のプロボクサー、デイビィは引退を考え、田舎に住む叔父夫婦の牧場で暮らそうとする。彼の部屋から路地を隔てた隣のアパートの部屋が見える。そこに住むのは過去のトラウマを抱えたダンスホールの女、グロリアだった。

 

ある夜、グロリアがホールのボスに乱暴されていた。デイビィは彼女を助け、二人はお互いに好意を寄せる。執念深いボスはデイビィを痛めつけようと手下たちに襲わせるが、勘違いでデイビィのマネージャーを殺し、グロリアを誘拐する。

斬新なカットのボクシングシーンはマーティン・スコセッシ監督の「レイジング・ブル」、夜のニューヨークの風景はジョン・カサベテス監督、隣のアパートの部屋が見えるシーンはヒッチコックの「裏窓」、マネキン倉庫はどこかホラーを、ボスが斧を振りかざすシーンは「シャイニング」を思わせる。

彼の長編2作目だった。「現金に体を張れ」には及ばなかったが、スタイリッシュなフィルムノワールだった。夜の袋小路でマネージャーが殺されるシーンなど光と影のモノクロ映像は魅力的だった。

 

でも67分という尺はやはり少し短すぎる。そしてこの映画の一番残念なところはハッピーエンドだということだ。