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映画に関する短いエッセイとその他

池田清彦「もうすぐいなくなります 絶滅の生物学」

ネアンデルタール人の男とホモ・サピエンスの女

最初の人類は、いまから700万年前にアフリカに現れたサヘラントロプスだとされている。約60万年前にネアンデルタール人の系統とホモ・サピエンスの系統に分岐する。

私たちにはネアンデルタール人の遺伝子が2%ほど入っている。

ミトコンドリアDNAは必ず母親から子に受け継がれるので(父親から受け継がれることはない)女系の系統を遡ることができる。現生人類のミトコンドリアDNAはホモ・サピエンス型、つまりネアンデルタール人の女性の子孫はいないのです。

 

ネアンデルタール人の遺伝子がなくならないというのはその遺伝子を持っている者ばかりが生き延びてきたことを意味する。

ネアンデルタール人と交雑することによって獲得された遺伝子は、更新世(約260万年前から1万年前)に起こった氷河期に耐えて生き残るために大いに役立った。

 

1万年前に終わった氷河期まで生きていたのはネアンデルタール人の耐寒遺伝子をもった者たちだった。「純血」を守ったグループは絶滅したのでしょう。

 

すなわち現生人類でもっとも偉大だったのはネアンデルタール人の男とセックスしたホモ・サピエンスの女というわけです。現生人類はネアンデルタール人の男とホモ・サピエンスの女のハイブリッドの子孫。

 

地質学的な時間スケールでは人類の絶滅は時間の問題です。絶滅しても朝になれば東から太陽が昇り、夕方になれば西に沈み、地球は太陽の周りを回り続けることでしょう。