179分を飽きさせないストーリー
日本、濱口竜介監督
役者で演出家の家福は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある日、くも膜下出血で突然亡くなる。妻は愛しながらも夫を裏切り、浮気を繰り返していた。
そしてセックスした後に「奇妙な話」を語るのだった。亡くなってから妻がなぜ浮気をしていたのか、その理由を訊かなかったことを家福は後悔した。
2年後、喪失感を抱えながら生きていた家福は、広島の国際演劇祭で演出を担当することになる。23歳の渡利みさきが赤い愛車サーブの専属ドライバーになる。
家福は「4歳の時に亡くなった娘が生きていたら23歳になっていた」と話す。みさきもまた辛い過去を抱えていた。家福は妻を、みさきは母を、殺したのではないかという罪悪感を抱えていた。
家福とみさきはコーディネーターの韓国人コンの自宅に招かれる。そこにはコンの妻であり女優でもあるイ・ユナがいた。彼女は口が利けなかった。彼女は手話で家福に「彼女の運転はどうですか」と訊くと、「乗っていることを感じないほど上手だ」その言葉を聞いてみさきは嬉しくなる。
ここには国や言葉や立場を超えてゆく人と人の繋がりがあった。
原作はほとんど何も語らなかったが、心を揺さぶるものがあった。映画は179分間、語り続けながら、なぜか風のように通り過ぎるだけだった。
「悪くはないがそれほど良くもない」・・風のような映画だった。