腰の曲がった不気味な老婆
昭和27年、閉鎖的で因習の村、鬼首村(おにこべむら)の温泉「亀の湯」にやってきた金田一耕助。
彼は磯川警部から20年前、昭和6年にこの村で起こった未解決事件の再調査を依頼されたのだ。
鬼首村はかつて由良家と仁礼家に二分されていたが、20年前、仁礼家は恩田という詐欺師に騙され、徐々に勢いを失っていた。
老婆の歌う手毬唄の歌詞にのって怪奇な連続殺人が起こる。それは20年前の殺人事件の恨みが原因だった。途中から犯人の予想はつくが、それでも物語から目が離せないほど惹かれるものがあった。
音楽も素晴らしく、総社駅での「汽車の別れ」というどこか懐かしいラストシーンは一服の清涼剤だった。
ミステリーとホラーの味わいを持ちながら、まったく違う世界を描いていた。それは土俗的な日本の因習と怨念の世界だった。現実にはあり得ないが、日本人の琴線に触れる物語でもあった。
マニア向け映画雑誌で邦画、洋画を問わずミステリー映画の第一位になった作品だった。名作、傑作というものではないが思わぬ「発掘良品」に満足した。