自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

聖地には蜘蛛が巣を張る 2022年

実話から発想された物語

デンマーク、ドイツ、スウェーデン、フランス、アリ・アッバシ監督、118分

2000年初頭、イランの聖地マシュハド、「スパイダー・キラー」と呼ばれる娼婦だけを狙った連続殺人犯が犯行を繰り返していた。最終的に16人の娼婦が殺された。

聖地を浄化するという犯人を多くの人が英雄視し、熱狂していた。

女性ジャーナリストのラヒミは事件に消極的な警察や聖職者などの圧力に遭いながらも犯人を追い求めてゆく。まったく手掛かりのないラヒミは自分が囮になって犯人と接触する。

やがて犯人サイードを突き止めるが、犯人は妻と二人の子供と平凡に暮らす信仰篤い男だった。しかしサイードには隠された狂気があった。すべての娼婦を殺すのが神からの使命であり、神のためだと考えていた。

そして逮捕されてもあくまで自分の無罪を主張し、多くの人がサイードの味方だった。

イードの息子が殺人の状況を詳しく説明するラストシーンは衝撃的だった。

 

イードの偏執的で異常な精神の怖さとスリリングな展開の社会派作品で、イランでは撮影できずレバノンで撮影したという。

 

アリ・アッバシ監督の前作「ボーダー 二つの世界」の不気味さはなかったが、寒々とするような雰囲気を漂わせる作品だ。