連続殺人犯の介護士と検事の対峙
日本、前田哲監督 114分
民家で介護されている老人と訪問介護センターの所長が死体となって発見された。容疑者として浮かび上がったのが介護士の斯波宗典だった。
彼は介護家族からも慕われる優しい仕事熱心な青年だった。検事の大友秀美は介護センターで介護されていた人の41人が亡くなっていることを突き止める。
斯波は41人の老人の命を奪ったことを認めるが、「殺人」ではなく「救い」だと主張する。「人にしてもらいたいことを何でも人にしてあげなさい」という聖書の言葉を信じていた。
彼は介護するものも介護されるものも安楽死を望むような苦しみに陥っていたから殺したのだった。これは喪失の介護・・ロストケアだと斯波は言う。
ある遺族からは「人殺し」と罵られていたが、一方、ある女性は介護から解放され再婚できるような境遇になった。
一方、検事の大友秀美も母と離婚した父を2か月も誰にも気づかれないままにゴミ屋敷のようなアパートで死なせていた。
斯波が41人の前に殺したのは自分の父親だった。当時の苦しみを語り「罪悪感を捨てて人を殺すことがある」「家族の絆はある一線を越えると呪縛になる」と斯波は供述した。
介護するものも介護されるものも地獄のような苦しみから救われたが、それでよかったのだろうか・・・この映画でその判断はされなかった。