自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

瞳をとじて 2023年

瞳をとじても見えるものがある

スペイン、ビクトル・エリセ監督、169分

映画監督ミゲルの「別れのまなざし」の撮影中に主演男優のフリオが突然失踪した。撮影は中止され、それから22年の歳月が流れた。ミゲルはそれ以降、映画を撮らなかった。

未完の映画「別れのまなざし」はある富豪の老人が中国にいる自分の娘を捜してほしいと探偵役のフリオに依頼する物語だった。

そんな時、かつての人気俳優失踪事件の謎を追うテレビ番組から出演依頼が舞い込む。取材への協力を決めたミゲルは、親友でもあったフリオと過ごした青春時代や自らの半生を追想していく。

 

そしてフリオに似た男が海辺の高齢者施設にいるとの情報が寄せられる。会いに行くとそれは紛れもなく、フリオだったが、彼は記憶を失っていた。しかし未完の映画で使われていた「中国人の少女の写真」と「チェスのキングの駒」をもっていた。ミゲルはフリオの娘アナに連絡する。

フリオの記憶が戻るかもしれないと、未完の映画のラストシーンを廃館になった映画館で上映する。そこに映し出された過去の自分の姿を見つめるフリオと、そして生涯を静かにゆったりと振り返ってゆくミゲル。

エリセ監督の自伝的な雰囲気を持った作品で、映画への深い愛を感じさせた。

 

ミツバチのささやき」「エル・スール」のビクトル・エリセ監督の31年ぶり4作目の長編映画だ。エリセ監督はこの映画で自分の人生を語っているのかもしれない。