戦後の暗い世界で生きてゆく人たち
日本、塚本晋也監督、95分
終戦直後、焼け残った小さな居酒屋、荒れ果てて、薄暗い部屋と汚れ切った襖、その中で横たわっている若い女。彼女は売春を斡旋され、それに抗うこともなく、無気力な日々を送っていた。夜の灯はランプだけで暗い部屋だった。
ある日、薄汚れた身なりの戦災孤児の少年が食べ物を盗みに入る。それ以来、少年は居酒屋に入りびたりになる。同じように教師だったという若い復員兵も居酒屋に居つくようになる。
3人はまるで幸せな家族のように暮らすが、少年は悪夢にうなされていた。やがて復員兵は乱暴をはたらいて居酒屋を追い出される。
少年はピストルを隠し持っていた。それを知った元兵隊のテキ屋の男とある仕事をしに出かける。その途中で座敷牢に閉じ込められた男に会う、彼も戦争のために気が狂っていたのだ。戦争の傷跡が人の精神を変えていた。
仕事とは軍隊の元上官を殺すことだった。その上官は何人もの捕虜を突き殺すように命令した男だった。
女と再会した少年は一人で闇市に出かけてゆく。暗い地下道は廃人たちでまるで地獄絵図のようだった。少年は闇市のなかで働きながら逞しく生きていこうとする。
戦争は終わったのに希望や明るさはまるでなかった。ランプの灯のように薄暗い映画だった。戦争ではなく戦後の荒れ果てた世界を描くことで見事な反戦映画になっていた。怪奇映画のような妖しい音楽も不気味な気分にさせた。