過酷な運命に翻弄される女
日本、戸田彬弘監督、126分
2015年、市子は3年間一緒に暮らしてきた長谷川から「結婚してください」と言われ、婚姻届けを見せられると、うれし涙にくれるがその翌日、姿を消してしまう。途方に暮れた長谷川は捜索願を出す。
彼の元に刑事の後藤が訪れ、市子の写真を指差し、「この女性は誰なのでしょうね、市子は存在しない」という。市子は無戸籍だった。
生駒山、山中で白骨死体が見つかり、死後8年だというニュースが流れている。警察は殺人と死体遺棄の容疑で市子とその母親の行方を追っていた。
市子の行方を捜す長谷川は友人や幼なじみや、同級生たちから話を聞くが、かつて市子はなぜか月子と名乗っていたことを知る。徐々に市子の過去が分かってくる。
市子にはある事情から戸籍がなく、しかも市子の妹月子は知的障害で回復の見込みのない筋ジストロフィーの患者だった。そして無戸籍の市子は一時期、月子に成りすましていた。
市子は幸せな頃の家族写真の裏に、ある住所を書いていた。長谷川はそこを訪ね、母親のなつみと会い、市子が月子を殺した時の状況を聞く。発作的な犯行だった。
時系列が頻繁に変わるので最初は戸惑ってしまう。結末がよく分からなくて観客の想像に任せているようでもあった。もしかしたら結末など必要ないものかもしれない。
ただ市子という女性の壮絶な人生を描きたかっただけなのかもしれない。