自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

夜明けのすべて 2023年

夜がやってくるから夜明けの明るさがある

日本、三宅唱監督 119分

雨の降りしきる中、傘もささずにベンチに横たわっている若い女性のショッキングなシーンから物語は始まる。

 

PMS月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなり、感情をコントロールできなくなる藤沢さんは、PMSのために会社の同僚・山添くんの炭酸水を飲むばかりの姿に怒りを爆発させてしまう。

転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、電車にも乗れなくなるようなパニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。

「生きるのが辛い、死にたくもない」栗田化学という小さな職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。

二人はお互いの病気のことを知りたいと思うようになる。やがて山添くんは、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになる。

 

生きるのが辛いと苦しんでいたのは二人だけではなかった。栗田化学の社長は弟を自死で亡くしていた。

夜空の星をみる移動式プラネタリウムのイベントを開催することになり、山添くんの原稿で、藤沢さんが解説を担当するのだった。やがて山添くんは仕事にやりがいを見つけ会社に残り、藤沢さんは母親の介護のために会社を辞めて実家に戻る。

 

どんな日も地球が動き続ける限り、必ず終わる。そして、新しい夜明けがやって来る。

使われている音楽も緩やかで大きな展開のある映画ではなく、静かないい作品だった。