板挟みの家族
デンマーク、アンダース・ウォルター監督 101分
第二次世界大戦終戦間際のデンマークで、敵国のドイツからの難民に救いの手を差し伸べたある家族の実話にインスパイアされたヒューマンドラマ。
終戦間近の1945年4月。デンマーク。市民大学にドイツから200人の難民が送られてくるという連絡があり、ナチスの命令で学長であるヤコブは受け入れを余儀なくされる。
しかし、実際には500人以上の難民がやってきた。不衛生で食料もなく医療品さえも事欠く中で、体育館に押し込められた難民たちの中で感染症が発生する。多くの子どもを含む難民が飢餓と感染症の蔓延により、命を落としていた。

ドイツからの協力はなく、またデンマーク側も難民たちの救援を拒否。ヤコブの息子・セアンは敵国ドイツからの難民に反感を持っていたが、病人の中から死者が続出すると、父・ヤコブ、母・リスとともに難民たちをなんとか助けようとする。
苦境を見かねたヤコブと妻のリスは救いの手を差し伸べるが、それは同胞たちから裏切り者と扱われかねない行為だった。
しかし、身内をナチスに殺されたビルクをはじめ町の人々はヤコブたち一家を「売国奴」と罵る。
12歳の息子もドイツ難民の少女と交流を持ちつつあったが、彼女が感染症にかかってしまう。何とかして彼女を助けようと医療機関を訪ねる。

祖国との板挟みで悩む家族の物語だった。
敵国の人間をどう扱うか、助けると自分たちも攻撃されるという重い主人公家族の選択。私たちがすべきことは、憎しみを煽ることでも、それに乗っかって憂さ晴らしすることでもないはず。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない終わり方だった。