自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

幻影師アイゼンハイム 2006年

幻影のなかに真実がある

2006年、アメリカ、ニール・バーガー監督

 家具職人の息子エドゥアルドは旅の途中、旅回りの奇術師と出会い、不思議な奇術を見せられ茫然とする。やがて奇術師は跡形もなく消えてしまう。15年後、エドゥアルドは幻影師アイゼンハイムと名を変えてウィーンに現れる。

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19世紀末、芸術の街ウィーンで魔術とも奇術ともいえる幻影師アイゼンハイムのイリュージョンが人々をひきつけていた。皇太子レオポルドが婚約者の公爵令嬢ソフィと共に劇場にやってきた。

 

15年前、アイゼンハイムとソフィは愛し合っていたが身分の違いから無理矢理引き裂かれていた。皇太子はアイゼンハイムを詐欺師と呼び、イリュージョンをいかさまトリックだと決めつけ、敏腕のウール警部に彼の逮捕を命じる。そして結婚を断ったソフィを皇太子は殺してしまう。

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 ウィーンの街並みがノスタルジックな色彩で映像化され、観客を幻惑し、華麗な音楽が幻想的な雰囲気をつくりだしていた。舞台上のイリュージョンも単なる奇術ではなく芸術性を感じさせた。

原作者スティーヴン・ミルハウザーの幻想美が全編を覆っており、映画そのものがイリュージョンだったが、幻影の中に真実があり、幻影に惑わされる喜びがある。幻灯機で映し出されるような夢幻の物語世界に取り込まれてゆく。

 

めくるめくようなイリュージョンに素直に身をまかせれば、この映画が実に魅惑的な作品であることに気がつくだろう。