自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

殺人鬼から逃げる夜 2021年

逃げ回るだけのストーリーだが引き込まれる

韓国、クォン・オスン監督 104分

聴覚障害を持つギョンミは手話相談センターに勤めていた。彼女はある夜、同じ聴覚障害の母と待ち合わせをして帰宅する途中、路地で血をながして倒れていた若い女性ソジュンを発見する。

その女性を襲った連続殺人犯のドシクは次の標的にギョンミを選ぶ。

殺人犯のドシクは一見、真面目そうな好青年だった。必死に母を守りながら殺人鬼のドシクから逃げ回るギョンミ。しかし聴覚障害のため、音は聞こえないし、言葉もうまく話せなくて叫ぶ声も周りの人に届かない。

それでも全速力で逃げ回る。ドシクもそれに劣らないスピードで追ってくる。

一方、血を流していたソジュンの兄ジョンタクは妹の帰宅が遅いので探し回り、交番にもやってくる。

最後は人通りの多い繁華街での二人の対決となる。そしてギョンミは驚くような方法で通行人たちにドシクが殺人鬼だと知らせる。

 

特にギョンミとドシクが夜の下町や路地を全速力で走るシーンがとてもスリリングでハラハラドキドキさせた。

シンプルな物語だがあちこちに小さな工夫を凝らして飽きさせることがなかった。

ふたりの女王 メアリーとエリザベス 2018年

凄まじい権謀術数

イギリス、ジョージ―・ルーク監督 124分

16歳でフランス王妃になりながら、18歳で未亡人となったメアリーはフランス育ちのカトリックとして1561年、故郷のスコットランドに女王として帰ってきた。

 

しかし当時のスコットランドは新教徒の勢力が強く、カトリックのメアリーは快く受け入れられなかった。メアリーは臣下の策略に翻弄され、内乱などによって、何度も王座を追われそうになる。

一方、従姉であるイングランド女王エリザベスとは王位継承をめぐって複雑な感情に陥っていた。天然痘の跡が残ったエリザベスと違ってメアリーは美しく、結婚もして男児を産む。二人は男性社会の中で孤軍奮闘する女性として激動の世の中を生き抜いてゆく。

 

二人にとって女王としての悲哀は同じものだった。とうとう最後にメアリーは女王としてエリザベスに助けを求めるが、「私はもう男なの」と断られる。エリザベスもまた陰謀に怯えながら生きていたのだ。

メアリーは1587年、臣下たちの陰謀によって処刑される。安泰となったエリザベスは45年間、イングランド女王として君臨する。

 

結婚までして男児を産んだ強気のメアリーと何もせずにじっと忍耐強く待ち続けたエリザベスの違いがこの結果になったのかもしれない。

しかしメアリーの産んだジェームズは後に、統合されたイングランドスコットランドの初めての君主となる。

男の暴力と策謀との間で振り回されるメアリーの悲哀を痛烈に感じさせる作品だった。

この愛のために撃て 2010年

ノンストップ・アクションの醍醐味

フランス、フレッド・カヴァイエ監督 85分

パリの病院、看護助手のサミュエルの妻ナディアは妊娠中で出産を待ち望んでいたが、何者かに誘拐されてしまう。サミュエルは交通事故で病院に運ばれた瀕死の男を3時間以内に警察の監視下から連れ出すように脅迫される。

瀕死の男は殺し屋で指名手配犯のサルテだった。

サミュエルは犯人の要求に従い、サルテを連れて病院を抜け出す、そのために殺人課の刑事たちやヴェルネールの率いる捜査班に追われる事態になる。

 

実はこのヴェルネールが一連の事件に関与しており、部下の捜査班の刑事たちも犯罪に加わっていたのだ。彼は警察官でありながら、裏家業として殺人を引き受けていて、そのために罠におとしいれた殺し屋のサルテを殺そうとしていたのだ。

サミュエルはなんとしても身重の妻を助けたかった。そのために殺し屋のサルテとサミュエルの間に、緩い協力関係が生まれる。二人でヴェルネールやその仲間の刑事たちに立ち向かってゆく。

 

さすがフランス映画らしく85分の中に面白さが凝縮されていた。スピーディでテンポもよくサスペンス映画として満足のいく内容だった。