自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

荒野の誓い 2017年

殺し続けると慣れてくる

アメリカ、スコット・クーパー監督

1892年、ニューメキシコ州、多くの先住民(ネイティブアメリカン)を殺してきたジョー・ブロッカー大尉はシャイアン族の首長イエロー・ホークとその家族をモンタナ州に護送する任務に就く。

かつて二人は敵対関係にあったがイエロー・ホークが末期ガンで故郷のモンタナ州「熊の渓谷」で死にたいと望んだからだ。

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その途中、コマンチに夫と娘たちを殺された女性ロザリーを助ける。ロザリーは狂ったように泣き叫び、荒野に穴を掘り、死んだ家族の四つの墓をつくる。

ロザリーは自分が死んだらこの地に葬ってほしいと大尉に約束させる。

 

彼女を連れてモンタナへの旅を続けるが、ガラガラ蛇のようなコマンチが襲ってくる。大尉とイエロー・ホークは協力してコマンチと戦う。

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死期の近づいたイエロー・ホークに大尉が語りかける「あなたも私も多くの友達を失った。過去を振り返るのはよそう、友よ、前に進もう」

 

故郷の風景を見たイエロー・ホークは「この上もなく美しい」とこの世を去ってゆく。しかしこの地に先住民の墓をつくることを許さない4人の白人が現れ、殺し合いが終わることはなかった。

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アメリカの魂は孤独で禁欲的で人殺しだ、いまだに和らがぬ」(D.Hロレンス)

 

鉄道が敷かれ、開拓時代が終わり、新しい世紀を迎えようとしていた。西部劇の新時代を予感させる重厚で力強い映画だった。

再会の夏 2018年

戦争と犬と男と女

フランス、ベルギー、ジャン・ベッケル監督

第一次大戦が終わった1919年の夏、フランスの片田舎、復員兵のジャック・モルラックが営倉に留置されていた。

彼を軍事裁判にかけるかどうかを判断するために軍判事のランティエ少佐がやってくる。その営倉の前では一匹の犬が夜も昼も吠え続けていた。

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少佐はジャックに尋問するが彼は黙秘を続け有罪を望んでいた。彼はいったいどのような罪を犯し、なぜ有罪を望んでいるのか、私たちにはわからない。ランティエ少佐は犯罪の動機を調査する。

ジャックには村はずれに住む妻ヴァランティーヌと幼い息子がいた。

少佐はヴァランティーヌに会いに行くが、彼女もまた何も話さなかった。少佐にとってこれは最後の任務だったので、できればジャックを無罪放免にしたかった。

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やがて私たちは彼が国家侮辱罪に問われていることを知る。しかしレジオン・ドヌール勲章をうけた英雄のジャックがなぜ国家侮辱罪に問われているのか。

 

傑作というわけではないが、1919年という時代背景とフランスの田園風景、今とは違いゆったりと流れる時間、そして悪人の出てこないストーリー展開で心地いい作品だった。

戦争を告発する作品というよりも、いかにもフランス映画らしい田舎町を舞台にした戦争と犬と男と女の物語だった。

 

ちなみにジャン・ベッケル監督の「クリクリのいた夏」は私の好きな映画だ。

西部戦線異状なし 1930年

戦場の蝶々

アメリカ、ルイス・マイルストン監督

第一次世界大戦、フランスとドイツの西部戦線での凄まじい塹壕戦を描いた90年前の映画。反戦映画の原型とでもいうべき作品で、少しも風化していない。ドイツ兵をアメリカ人俳優が演じ、言葉も英語だった。

ドイツでは上映禁止になり、日本では検閲がはいったという。

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ドイツの町、群衆の大歓声のなか兵隊たちが行軍している。戦地に赴くのだ。人々は「戦争はすぐに終わり、死者もわずかだろう」と言う。

しかしドイツは多くの戦死者をだし、敗戦が近づいていた。

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学校では老教師が軍隊に志願するよう学生たちを扇動している。ポールたち学生は祖国に殉ずるために意気揚々と戦地に赴く。

しかしそこは学生たちが思っていたような世界ではなかった。兵士たちは食料もなく飢え、親友は野戦病院で足を切り落とし、戦友たちは泥の戦場で命をおとした。

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ポールは敵のフランス兵を銃剣で刺し、その最期を看取る。このシーンはフランス兵がドイツ兵を殺した後悔から彼のドイツの家族を訪ねるというエルンスト・ルビッチ監督の「私の殺した男」を思い出させた。

 

休暇で帰郷したポールは老人たちが戦争に熱狂している姿を見る。若者たちの死を嘆くよりも戦争の勝利を熱く語っていた。

学校では今も老教師が学生たちを煽り立てていた。ポールが戦争の真実を学生たちに話すと臆病者と言われる。もう故郷じゃないとポールは戦場に帰ってゆく。

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ポールは塹壕から手を伸ばし蝶々に触れようとする・・その姿をフランス兵の銃口がとらえていた・・その日も司令部への報告は「西部戦線異状なし」だった。