2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧
子どもにチャンスだけは与えたい 1996年、アメリカ、リー・デビッド・ズロトフ監督 パーシーは5年間の刑期を終えて出所した。メイン州の田舎町ギリアドの軽食カフェで働くことになる。よそ者の彼女は町の人たちの好奇の眼にさらされる。カフェの女主人ハナは…
デビー、家に帰ろう 1956年、アメリカ、ジョン・フォード監督 1868年、テキサス、開拓地の家の扉を開くと荒野に馬上の男の姿が見える。南軍の元兵士イーサンが兄夫婦一家を訪ねてきたのだ。兄の一家はイーサンを大歓迎する。 イーサンが牛泥棒を追っている隙…
滅びた文明を訪ねてみたい 世の中に旅行者はたくさんいるが時間旅行者はまずいない(と思う)。 もし私が時間旅行者だったら江戸末期、明治初期(1850年頃)の日本を訪ねてみたい。その時代に日本を訪れた多くの西洋人が日本の生活と日本人の印象を書きしる…
シュールでもリアリズムでもない世界 1996年、フィンランド、アキ・カウリスマキ監督 路面電車の運転士ラウリとその妻でレストランの給仕長イロナ、同じ時期に二人は失業してしまう。世の中は不況でいくら探しても仕事は見つからなかった。テレビや家具も売…
北欧ミステリーの圧倒的な面白さ 映画「ドラゴンタトゥーの女」はアメリカ版、スウェーデン版、どちらもとても面白い作品だった。しかし原作であるスティーグ・ラーソンの小説「ミレニアム」には到底及ばない。小説は「ドラゴンタトゥーの女」「火と戯れる女…
軍靴と十字架 1966年、日本、鈴木清順監督、新藤兼人脚本 昭和10年(1935年)、備前岡山第二中学の南部麒六(キロク)は喧嘩の達人「すっぽん」から喧嘩の極意を教わる。しかし軍事教練の教官と衝突して会津若松の喜多方中学へ転校する。そこでも喧嘩…
60年代、南部の黒人女性たち 2008年、アメリカ、ジーナ・プリンス=バイスウッド監督 14歳のリリィの衝撃的なモノローグで映画は始まる。「4歳の時、ママを殺した、私がやったのよ」、リリィは大好きなママを殺してしまった。 1964年、サウスカ…
眠るように死にたいと誰もが夢見る 2016年、インド、シュバシシュ・ブティヤニ監督 77歳のダヤは何度も同じ夢をみて、自分の死期を悟った。彼はこの世に疲れてしまって、生きることが億劫になったら潔く死を迎え入れよう思っていた。そして死をむかえる人た…
村上春樹とスティーヴン・キング 「職業としての小説家」のなかで村上春樹はこう書いている。 『工場なんかの製作過程で、あるいは建築現場で、「養生」という段階があります。製品や素材を「寝かせる」ということです。ただじっと置いておいて、そこに空気…
お前のスープの味がわかった 1994年、台湾、アン・リー監督 映画は料理のシーンから始まる。大きな鯉の口に串を刺し、切りさばき、粉をまぶし、油で揚げ、飼っていた鶏を捕まえて料理する。カエルも調理される。大きなセイロ蒸しもあり、眼を見張るよう…