自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ブック

ハルノ宵子「猫だましい」

表紙の猫が自画像のように見える ブロ友さんの紹介で読んでみたが、「トンデモ本」だった(もちろんいい意味で) 漫画家、エッセイストのハルノ宵子の父は思想家、詩人の吉本隆明、妹は作家の吉本ばなな。 2017年、内科医はステージⅣの大腸がんだとつぶ…

「一人で生きる」が当たり前になる社会

荒川和久、中野信子対談集 第1章 「ソロ社会」化する日本 孤独死しているのは、ほぼ元既婚者。結婚していても孤独死するという現実。一人でいたい人が4割、他者といたい人は6割。2040年には独身者が47パーセントになる。 第2章 孤独とは悪いことな…

女性の見た戦後

後片付け ポーランドの女性詩人、ヴィスワヴァ・シンボルスカ 「終わりと始まり」 戦争が終わるたびに 誰かが後片付けをしなければならない 物事がひとりでに 片づいてくれるわけではないのだから 誰かが瓦礫を道端に 押しやらなければならない 死体をいっぱ…

藻谷浩介「しなやかな日本列島のつくりかた」

「現智の人たち」7人との対話集 第一章「商店街」は起業家精神を取り戻せるか 起業家精神もなく不動産を固守する店主。町を私物化する集団が町を内部から腐らせてゆく。20世紀に発明された商店街を残す意義。 第二章「限界集落」と効率化の罠 なぜ限界集落…

星野道夫「旅をする木」

星野は1952年千葉県市川生まれ、86年アニマ賞、90年木村伊兵衛賞受賞、96年カムチャッカにて逝去。変わりゆくアラスカを写真と文章で記録していった。 魅力的な33篇のエッセイ集だ。いや何よりも星野の生き方そのものがじつに魅力的なのだ。便利…

中村うさぎ「私という病」

「どうして私は、女であることを、おおらかに正々堂々と楽しめないのか」これが中村の長年の疑問だった。 中村が買い物依存症、ホスト依存症の次に体験したのが「デリヘル嬢」だった。47歳なのに32歳と偽って面接を受け、採用された。源氏名は「叶恭子」…

フェルディナント・フォン・シーラッハ「犯罪」

ドイツで屈指の刑事事件弁護士といわれる著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちを鮮やかに描いた11編の傑作短編集。 著者は映画「コリーニ事件」の原作者でもある。祖父はナチ党全国青少年最高指導者パルドゥール・フォン・シーラッハ。 …

池上彰、佐藤優「大世界史」

本の内容を簡単にスケッチした 歴史は現代と関連づけて、初めて生きた知になる。歴史を重ねてみると「いま」が立体的にみえる。 中東はユダヤ教、キリスト教、イスラム教という三大宗教の聖地があり文明発祥の地であり、産油国。常に「世界史大転換の震源地…

沢木耕太郎「チェーン・スモーキング」

短編小説のようなエッセイ集。その中の一編「赤や緑や青や黄や」 ちなみにタイトルは「公衆電話の色」のこと。 「私鉄駅のプラットホームで・・売店脇の緑色の公衆電話から少女の声が聞こえてきた。どうやらそれは、入学試験の合否の発表を見にいき、自分の…

村上春樹「ドライブ・マイ・カー」

映画「ドライブ・マイ・カー」は高評価だが、とりあえず原作を読んでみた。 性格俳優の家福は「接触事故を起こし、免許証も停止になった・・それから視力にも問題があった」 仕方なく専属の運転手が必要になり、北海道からやってきた「渡利みさき」を雇った…

竹中労「鞍馬天狗のおじさんは」

鞍馬天狗は嵐寛寿郎だった。通称「アラカン」 この本はある人に勧められてずいぶん前に読んだ。おもしろくて夢中になった。 内容はほとんど忘れているが、アラカンが「おなごは可哀そうなものじゃ」と何度も何度も語っていた事はよく覚えている。 だからなの…

香山リカ 堕ちられない「私」

高田純次のいい加減さと調子のよさには笑ってしまうが、脱力系の柔軟さもある。 精神科医の香山リカ『堕ちられない「私」』はどこか高田純次と通じるものがあるような気がした。 香山はこのように書いている。 うつ病などの心の病にかかったり、ドラッグ、暴…

桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

ライトノベルの衝撃 鳥取県境港市の中学校、13歳の山田なぎさのクラスに美少女の転校生がやってきた。海野藻屑(もくず)で自分のことを「ぼく」と言い、海からやってきた人魚だという。 父親はかつての有名な歌手、海野雅愛だった。デビュー曲「人魚の骨…

沢木耕太郎「流星ひとつ」

藤圭子へのインタヴュー 1979年秋、沢木耕太郎(31歳)は引退直前の藤圭子(28歳)にホテルニューオータニのバーでウォッカの杯を重ねながらインタヴューをした。 インタヴューは無事に終わったが、当時、沢木はノンフィクションの「方法」について…

美空ひばりと沢木耕太郎

有名であれ 無名であれ「秋のテープ」 沢木はラジオのインタビュー番組で、高倉健とは「北海道の牧場」で吉永小百合とは「「修善寺の温泉宿」中島みゆきとは「新宿のうどん屋」・・そして美空ひばりとは「赤坂プリンスホテル」で対談が行われた(84年3月…

高倉健と沢木耕太郎

深い海の底に 沢木はラスヴェガスでおこなわれるヘヴィー級、ラリー・ホームズとモハメッド・アリのタイトルマッチのチケットを手に入れてもらえないかと友人に電話するが、すでに完売だった。 ところがその友人の知人がチケットを快く譲ってくれた。その知…

レオ・レオーニ「あおくん と きいろちゃん」

色紙をちぎった絵本 原題は「Little blue and little yellow」 あおくんはパパとママと一緒に住んでいました。お友達もたくさんいました。でもいちばんの仲良しは、きいろちゃんです。ある日、あおくんはママにお留守番を頼まれますが、きいろちゃんと遊びた…

淀川長治と沢木耕太郎

「沢木耕太郎セッションズ」より 1991年に「ダカポート」に掲載された沢木耕太郎と淀川長治の対談 映画評論家の批評はほとんど読まないが、沢木耕太郎の映画評だけはよく読んでいた。文章が端正で、どこか感性が私に似ているような気がしたからだ。 「あ…

内田樹「ひとりでは生きられないのも芸のうち」

「ひとりで生きられない」のは重要な能力 内田さんの夢見る組織は小津安二郎の映画で佐田啓二や高橋貞二、司葉子、岡田茉莉子が勤めているような会社である。 終身雇用・年功序列で社員旅行でロマンスが生まれ、上司(佐分利信)の奥さん(田中絹代)が「う…

読書の扉をノックする

愉しみの読書 以前は読んだ本を日記(10年日記)にメモしていたが、今はすっかり忘れている。ここ2~3か月(たぶん)の間に読んだ本を思い出す限り書き出してみた。 ミシェル・ビュッシ「彼女のいない飛行機」、河合薫「コロナショックと昭和おじさん社…

森本あんり「宗教国家アメリカの不思議な論理」

神学的な観点がないとアメリカを理解できない 「神は、従う者には恵みを与え、背く者には罰を与える。自分は成功し、恵まれている。だから神は自分を是認している。自分は正しい」という勝者の論理がアメリカを貫いている。 このアメリカ的な精神や論理を露…

小堀純編「中島らもエッセイ・コレクション」

中島らもの世界を測る物差しが見当たらない 規格外の男、中島らもにも師匠がいた。 「先生ごぶさたしています」「おう、中島か、何や」「何やって、先生がこの前、たまには顔でも見せんかバカ、って電話くださったから」「ふうん、で・・・何しにきた」「何…

「単独飛行」と「やがて哀しき外国語」

「単独飛行」はドイツとの戦争体験を15の短篇で構成したロアルド・ダールの自伝。彼は「あなたに似た人」や「キス・キス」の作者で短篇の名手。 20代前半だったダールは1938年から41年までアフリカやギリシアでパイロットしてナチスと戦った。ほと…

群像短篇名作選2000~2014

感動作、怪異譚、不思議小説、パンク小説、ハートウォーミング、ユーモア小説とバラエティに富んでしかも粒ぞろいの短篇ばかり。 黒井千次「丸の内」、村田喜代子「鯉浄土」、小川洋子「ひよこトラック」、竹西寛子「五十鈴川の鴨」、町田康「ホワイトハッピ…

ガッサーン・カナファーニ「ラムレの証言」

イスラエルとパレスチナ アブー・オスマーンはその生涯ずっと、穏やかでみなから愛された男だった。自分が死んだらラムレの美しい墓地に埋葬してほしいという事だけが望みだった。 彼は末娘のファーティメを傍らに抱き寄せて立っていた。幼い少女はつぶらな…

「ゴーゴリの妻」と「カフカの父親」

是枝裕和監督作品「空気人形」 男たちの性処理のために作られたラブドール「のぞみ」はへそから空気を吹き込むようになっていた。ある日、彼女は人間の心を持ってしまった。そしてDVDショップの青年を愛するようになる。空気人形の淡いエロスを感じさせた。 …

高野秀行「謎の独立国家ソマリランド」

そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア 高野は無政府状態のソマリアを2009年と2011年、取材で訪れた。ソマリアは民主国家「ソマリランド」海賊業の「プントランド」戦国状態の「南部ソマリア」に分かれている。 ソマリ人には昔から拉致文化…

「はじめての文学」よしもとばなな 

でも、たまにはいいこともあるさ 現代日本の文学を代表する、個性豊かな作家12名が、文学の入り口に立つ若い読者へ向けた中短篇の自選アンソロジー。 村上春樹 村上龍 よしもとばなな 宮本輝 宮部みゆき 浅田次郎 川上弘美 小川洋子 重松清 桐野夏生 山田…

山本周五郎の短編

江戸の町にタイムスリップ 自由がないというわけでもないが、どこか監視社会を思わせる息苦しい世の中になった。「正義の言葉」に気が滅入り、山本周五郎の短編を読み返した。 胸を切り裂かれるような哀しみや生きる力を与えてくれる人間賛歌に「真実の言葉…

シオドア・スタージョン「孤独の円盤」

宇宙からのメッセージ 海辺に流れ着いた壜の中のメッセージはどこかミステリアスな気がする。どのような願いと祈りが込められているのだろう。 孤独な人が瓶のなかに「寂しくて死にたい」というメッセージを入れて海に流した。長い年月の末、たまたま海辺で…