自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ブック

シオドア・スタージョン「孤独の円盤」

宇宙からのメッセージ 海辺に流れ着いた壜の中のメッセージはどこかミステリアスな気がする。どのような願いと祈りが込められているのだろう。 孤独な人が瓶のなかに「寂しくて死にたい」というメッセージを入れて海に流した。長い年月の末、たまたま海辺で…

萩原朔太郎「猫町」

見知らぬ町 一時的に方向感覚を失うという経験はないだろうか。 遊び心でいつもの道ではなく違う道を歩いてみようと思った。ところがその道はこの町に20年以上住んでいる私が知らなかった寂しい道だった。 小さな川があり橋が架かっていた。そこは今まで見…

沢木耕太郎「ポーカー・フェース」

男派と女派 作家の沢木耕太郎は神田の鮨屋「鶴八」の親方に「いままでの人生で、大事なことというのは男と女のどちらに教えてもらいましたか」と訊いた。「やっぱり男かな」と親方は答えた。「沢木さんはどうなんです」沢木は「僕の場合は・・女のような気が…

深緑野分「オーブランの少女」

少女にまつわる五つの物語 五つの物語とは「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」 舞台となる国も時代もちがう物語だがどこか可憐で妖しい雰囲気が漂い、しかもミステリアスでトリッキー、最後まで惹きつけられる短編集だった…

向田邦子「父の詫び状」

向田邦子は突然あらわれてほとんど名人 向田邦子の父は未婚の母に育てられた。当時、未婚の母が子供を育てるというのは世間の目もあり、母親にとっても子供にとっても大変なことだった。小学校卒で給仕として保険会社にはいり、苦学して支店長にまでのぼりつ…

ピート・ハミル「ニューヨーク・スケッチブック」

ニューヨークを舞台にした34の短編 最後の一編を少しアレンジしてみた 老女優は毎日、プラザホテルで昼食をとっていた。そこは果敢に時の流れに抗しているので彼女のお気に入りのホテルだった。彼女の肌にはしわができカサカサになっていた。もう昔のよう…

スティーグ・ラーソン「ミレニアム」3部作

北欧ミステリーの圧倒的な面白さ 映画「ドラゴンタトゥーの女」はアメリカ版、スウェーデン版、どちらもとても面白い作品だった。しかし原作であるスティーグ・ラーソンの小説「ミレニアム」には到底及ばない。小説は「ドラゴンタトゥーの女」「火と戯れる女…

ナサニエル・ホーソーン「ウェイクフィールド」

合理的な解釈が成り立たない不可解な話 1835年に発表されたナサニエル・ホーソーンの短編「ウェイクフィールド」を世界的な短編作家であるホルヘ・ルイス・ボルヘスは「ホーソーンの短編のうちの最高傑作であり、およそ文学における最高傑作のひとつ」と…

石井妙子「おそめ」

伝説の銀座マダムの数奇にして華麗な半生 小説と映画「夜の蝶」のモデルだった通り名おそめ、彼女は銀座と京都を飛行機で行き来し「空飛ぶマダム」と呼ばれた。本名は上羽秀で大正12年(1923年)生まれの古風な京女。 バーのママで後に作詞家、作家になった…

クリスマス・ストーリー

キャサリン・アン・ポーター「クリスマス・ストーリー」 「クリスマス・ストーリー」をすこしコンパクトにまとめてみた。クリスマスの雰囲気を味わってほしい。 私は初めからサンタクロースが好きではなかった。イエスの誕生日の祝祭からイエスを締め出しか…

病(やまい)短編小説集

石井久郎監訳「病(やまい)短編小説集」 「病気」を題材にした短編ばかりを集めたユニークな短編集で書き手がなかなか豪華。 サマセット・モーム「結核」、コナン・ドイル「梅毒」、O・ヘンリー「神経衰弱」、ジャック・ロンドン「ハンセン病」、スコット・…