自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

私の知らないわたしの素顔 2019年

現実の耐えられない軽さ フランス サフィ・ネブー監督 50代の美しい女性、大学教授のクレールは離婚歴があり二人の息子がいた。彼女は精神分析医の治療を受けていた。クレールは過去の出来事を分析医に語り始める。 年下の恋人リュドに捨てられたクレール…

ブラ!ブラ!ブラ! 2018年

アゼルバイジャンのバスター・キートン ドイツ、アゼルバイジャン ファイト・ヘルマー監督 鉄道運転手のヌルランは一人暮らしの孤独な男だった。毎日、決まったように貨物列車を運転していた。密集した住宅の中を走る線路には洗濯物が干されており、男たちが…

内田樹「ひとりでは生きられないのも芸のうち」

「ひとりで生きられない」のは重要な能力 内田さんの夢見る組織は小津安二郎の映画で佐田啓二や高橋貞二、司葉子、岡田茉莉子が勤めているような会社である。 終身雇用・年功序列で社員旅行でロマンスが生まれ、上司(佐分利信)の奥さん(田中絹代)が「う…

ラスト・ディール 2018年

「男の肖像」この男は誰なのか フィンランド クラウス・ハロ監督 ヘルシンキ、老美術商のオラヴィはギャラリーの経営がうまくいかず、店じまいをしようとしていたが、もう一度だけ名画にかかわりあいたいと思っていた。 一人娘から補導歴のある孫息子のオッ…

ルビー・スパークス 2012年

小説の中から登場したルビー アメリカ、ジョナサン・デイトン、バレリー・ファレス監督 高校を中退して19歳で天才作家と呼ばれるようになったカルヴィン、しかしその後の10年間、スランプで一冊も本を書き上げることができなかった。セラピーをうけてい…

レ・ミゼラブル 2019年

人生そのものの格差 フランス ラジ・リ監督 150年前の1862年6月のパリの民衆蜂起、バリケードのなかでは「自由、平等、博愛」をあらわす三色旗が翻っていた。 2018年、サッカーのワールドカップで優勝したフランス、熱狂し凱旋門前で国旗(三色…

コロナのなかの映画館

エンターテインメントにエールを 「映画館で映画を観るのは軽い運動をするのと同じぐらい健康にいい」という海外ニュースがあった。家で観るのはダメだという。暗闇の中で観客たちは繋がっている。 個人的な事情がいろいろ重なって最近は映画館に行くことが…

存在のない子供たち 2018年

社会的に存在しないということ レバノン、ナディーン・ラバキー監督 ラバキー監督のデビュー作「キャラメル」はレバノンのエステサロンを舞台にしたとても魅力的な作品だった。 12歳の少年ゼインはある男をナイフで刺して5年の刑で服役していた。刑務所か…

アルプススタンドのはしの方 2020年

♪この青すぎる空が・・・♪ 日本、城定秀夫監督 夏の甲子園、高校野球の一回戦に出場している母校のためにアルプススタンドに応援にきた女性演劇部員の安田と田宮、元野球部員の藤野、優等生の女学生宮下、吹奏楽部の女性部長の久住、熱血教師の厚木、彼らが…

ペイン・アンド・グローリー 2019年

アルモドバル監督の円熟 スペイン ペドロ・アルモドバル監督 スペインのマドリード、映画監督のサルバドールは背部の痛み。片頭痛など身体の不調など心身ともに疲れ、映画制作から遠ざかっていた。 子供時代の母との思い出や、バレンシア村の出来事、バルセ…