自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

國友公司「ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活」

どっこい生きている 西成区の4人に一人が生活保護受給者だが、あいりん地区だけをみれば割合はもっと高く、貧困ビジネスが横行する。元ヤクザやホームレスやシャブ中が徘徊し、社会からドロップアウトした人たちが暮らす町。 新世界国際劇場はオカマの魔窟…

ストックホルムでワルツを 2014年

スウェーデン語で歌う「テイクファイブ」 スウェーデン、ペール・フライ監督 スウェーデンの女性ジャズシンガー、モニカ・デタールンドの半生を映画化した。 1960年頃、ストックホルムから離れた田舎町ハーグフォッシュで電話交換手として働きながらバー…

人生は、時々晴れ 2002年

人生は前にしか進まない イギリス、マイク・リー監督 サウスロンドンの公営住宅に住む労働者階級の3家族を中心にストーリーが展開する。それぞれの家族は問題を抱え、どこか共感できない人ばかりだった。 タクシー運転手のフィル一家、妻ペニーはスーパーの…

林檎とポラロイド 2020年

夢のような奇妙な世界 ギリシア、ポーランド、スロベニア、クリストス・ニク監督 ある夜、バスに乗っていた男は記憶を失っていた。覚えているのは林檎が好きだという事だけだった。 世界では前ぶれもなく記憶喪失が起こるという奇病が蔓延していた。医師たち…

哀しみの街かど 1971年

70年代ジャンキーのリアルな日々 アメリカ、ジェリー・シャッツバーグ監督 堕胎手術で疲れ切ったヘレンは同棲相手の部屋でヤクの売人でジャンキーのボビーと知り合い、彼の優しさに惹かれてゆく。 ボビーはヘレンをニューヨークのニードル・パークと呼ばれ…

村上春樹「品川猿の告白」

現代の御伽草子 作家が寂寥感あふれる群馬県の温泉宿に宿泊する。彼が温泉につかっていると、ガラス戸をガラガラと開けて、猿が低い声で「失礼します」と言って、風呂場に入ってきた。「背中をお流ししましょうか」作家は「ありがとう」と言った。 名前は「…

スウィート・シング 2020年

世界は悲しいけれど幸せな一日はある アメリカ、アレクサンダー・ロックウェル監督 特に好きな映画でもないのに、どうしてもレビューしたくなる作品がたまにある。インディーズ映画「スウィート・シング」はそのような作品だった。 マサチューセッツ州で暮ら…

トムとトーマス 2002年

双子の少年の冒険ファンタジー イギリス、オランダ、エスメ・ラマーズ監督 クリスマスのロンドン、画家の父親と二人で暮らす9歳の少年トーマスには空想上の友達トムがいた。ところがトムは空想ではなく、カーディーン養護施設に実在したのだ。養子だったト…

戦場のブラックボード 2015年

戦争と避難民たち フランス、ベルギー、クリスチャン・カリオン監督 音楽エンニオ・モリコーネ 1940年、ナチスドイツの侵攻で北部フランスの小さな町の住民は市長と共に南部の町ディエップに向かって疎開してゆく。家も財産もすべて捨てて車や馬車や徒歩…

ステップフォード・ワイフ、1975年

いつしか恐怖が沁み込んでくる アメリカ、ブライアン・フォーブス監督 原作はアイラ・レヴィンのSFホラー「ステップフォードの妻たち」 セミプロの写真家ジョアンナは弁護士の夫ウォルターと娘たちと一緒にニューヨークから閑静な田舎町ステップフォードに…