2021-01-01から1年間の記事一覧
短編小説のようなエッセイ集。その中の一編「赤や緑や青や黄や」 ちなみにタイトルは「公衆電話の色」のこと。 「私鉄駅のプラットホームで・・売店脇の緑色の公衆電話から少女の声が聞こえてきた。どうやらそれは、入学試験の合否の発表を見にいき、自分の…
60年代の風俗映画 日本、浦山桐郎監督 自動車の部品会社に勤める吉岡努は専務の姪マリ子と恋仲だった。吉岡は出世のためには手段を選ばない野心家だった。 ある夜、クラブの女から森田ミツのことを知らされ、7年前の1961年春、大学生時代の出来事を思…
緑色のカプセル アメリカ、アニーシュ・チャガンティ監督 郊外の一軒家に住む17歳のクロエは生まれつき不整脈で心臓が悪く、喘息、下半身麻痺で歩くことができなかった。 それでもクロエは自立しようとワシントン大学への入学を目指していた。合格通知がく…
明るい亡命生活 ドイツ、カロリーヌ・リンク監督 原作はドイツの絵本作家ジュディス・カーの自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」 1933年2月、ベルリン、演劇批評家の父、音楽家の母、そして兄と暮らす9歳のアンナ、ユダヤ人の父はラジオ…
ずいぶん前のことだが・・ 大阪、白昼の西成、男のホームレスが路上に倒れていた。「まな板の上の鯉」のように身体を痙攣させていた。 大阪駅でホームレスたちがレストランの残版を鍋に入れて温めていた。 「夜の姫君」と言われる女のホームレスを見たことが…
幸運の十字架 北マケドニア、ベルギー、スロベニア、クロアチア、フランス テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督 北マケドニアの小さな町、32歳のペトルーニャは大学を出ているのにまともな仕事もなく、太った体形で美人でもなく、恋人もいなかった。 就…
爽やかな香りを運んできた フランス、グレゴリー・マーニュ監督 離婚して娘の親権を奪われそうになっていた運転手のギョーム、交通違反で仕事も失いかけていたが、高級アパルトマンに住む天才調香師のアンヌの専属運転手としての仕事に就く。 しかしアンヌは…
つげ義春の陰画的世界を思わせる 中国、ビー・ガン監督 中国、貴州省の凱里市の小さな診療所に勤める医師チェン、彼は9年の刑期を終えて故郷の凱里に戻ってきた。母も妻も亡くなっていた。チェンが可愛がっていた甥のウェイウェイは鎮遠の町に追いやられて…
魂を揺さぶる民族音楽とヴィヴァルディ フランス、セリーヌ・シアマ監督 18世紀フランスの孤島、女性画家のマリアンヌは貴婦人から結婚のために娘エロイーズの肖像画を描くように依頼される。姉は結婚を強要され自殺し、エロイーズもまた結婚を拒んでいた…
女諜報員の戦争 アメリカ、ジリアン・アームストロング監督 第二次大戦下のイギリス、看護婦のシャーロット・グレイは汽車の中で、政府関係者リチャードからパーティに誘われる。そこでパイロットのピーターと一瞬のうちに恋に落ちる。 シャーロットはフラン…
原題は「nine lives」 アメリカ、ロドリコ・ガルシア監督 「A cat have nine lives」という諺がある。 女性9人の人生の一瞬を切り取った九つの物語のオムニバス。一話が12~13分程度の作品。同じガルシア監督のオムニバス「彼女を見ればわかること」に…
いつも曇った空の下で デンマーク、フラレ・ピーダセン監督 デンマークの農村、27歳の女性クリスは身体の不自由な叔父の介護と酪農の仕事をしていた。クリスは幼いころに両親を亡くし、14歳のとき叔父に引き取られた。 その後、叔父は倒れ、不自由な身体…
映画「ドライブ・マイ・カー」は高評価だが、とりあえず原作を読んでみた。 性格俳優の家福は「接触事故を起こし、免許証も停止になった・・それから視力にも問題があった」 仕方なく専属の運転手が必要になり、北海道からやってきた「渡利みさき」を雇った…
二つの人生が交差する庭園 日本、新海誠監督 15歳の高校生タカオは靴職人を目指していた。雨の日は午前中の授業をさぼり、新宿の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。靴をつくることだけが自分を別の場所に連れて行ってくれた。 6月、梅雨入り、いつもの…
男たちの生きざま アメリカ、ジェームズ・マンゴールド監督 原作はエルモア・レナードの短篇「三時十分発ユマ行き」 南北戦争後のアリゾナ、牧場主のダンは妻と二人の息子との4人暮らしだったが、生活は困窮し土地から追い出されようとしていた。ダンは北軍…
野菊とりんどうの花 日本、木下恵介監督 渡し舟に一人の老人が乗っている。老人はこの地で育った斎藤政夫で船頭に思い出を語っていた。60年前の回想から物語は始まる。 政夫は大きな屋敷の旧家の次男坊だった。母が病弱なため従妹の民子が手伝いに来ていた…
出口のない迷宮 イギリス、フランス、フロリアン・ゼレール監督 ロンドン、一人暮らしの81歳のアンソニーは認知症で記憶があやふやになっていた。娘のアンが心配して自分の家に引き取る。 ところがアンソニーはそれすらもわからなかった。認知症のアンソニ…
告解、ミサ、聖体 ポーランド、フランス、ヤン・コマサ監督 ワルシャワ、少年院に服役中の20歳のダニエルは仮釈放される。彼は神の元で働きたいと願っていたが、トマシュ神父に前科者は聖職につけないと言われ、仕事先の製材所に向かう。 田舎町の教会で、…
10年先のことなど分からないが・・ 友人に勧められて2012年から10年日記をつけている。今年で終わるので、先日、来年からの10年日記を買った。ちなみに税込み3300円だった。友人はもう4冊目で39年間、日記をつけている。 実に使いやすい日…
ありのままのあなたを受け入れる イギリス、トム・フーバー監督 1926年、デンマークのコペンハーゲン、才能ある風景画家のアイナー・ベルナーは同じ画家の妻ゲルダに女性モデルの代役を頼まれる。 女性のストッキングをはき、衣装を着たアイナーは微妙で…
遠い明治の幻影 日本、稲垣浩監督 明治30年、九州小倉、富島松五郎、彼は無法松と呼ばれる喧嘩っ早い人力車夫だった。ある日、怪我をした少年敏雄を助け、家に送り届ける。そこは陸軍大尉、吉岡小太郎の家で夫人のよし子がいた。 吉岡は突然の病気で亡くな…
鞍馬天狗は嵐寛寿郎だった。通称「アラカン」 この本はある人に勧められてずいぶん前に読んだ。おもしろくて夢中になった。 内容はほとんど忘れているが、アラカンが「おなごは可哀そうなものじゃ」と何度も何度も語っていた事はよく覚えている。 だからなの…
悪魔の風車と地下水道 フランス、ドイツ、ベルギー、ミシェル・オスロ監督 19世紀末から20世紀初頭、ベル・エポックと呼ばれる良き時代、美しいパリを舞台にしたアニメ。 ニューカレドニアからやってきた少女ディリリは配達人の青年オレルから声をかけら…
今日もドスの雨、刺せば監獄、刺されば地獄 日本、川島透監督 新宿、山東会の幹部、花城竜二は舎弟の二人に賭博場を仕切らせて、優雅な暮らしを続けていた。竜二には別れた妻と幼い娘がいた。彼はヤクザの生活に不安を感じ、落ち着かなくなってきた。 夫婦で…
シマロンとはスペイン語で無法者の意味 アメリカ ウェズリー・ラッグルス監督 1889年、オクラホマ、4月12日、正午の合図と同時に競争によってインディアンの土地を獲得できるランドラッシュ(グレートラン)が行われた。 6週間で荒野に一万人の町オセ…
映画「愛を読むひと」では文字の読めない女性が本を読んでもらうことに至上の歓びを感じていた。「読書する女」は朗読を職業とする若い女性の物語。 本を読むことで世界が違って見える。 私の読書体験はモーリス・ルブラン「怪盗ルパン」やジュール・ヴェル…
タトゥーは皮膚に描かれた表現 アメリカ、ガイ・ナティーブ監督 スキンヘッド集団「ヴィンランダーズ」の共同創設者ブライアン・ワイドナーの実話を基に映画化された。 2009年、オハイオ州、コロンバス、ブライアンは白人至上主義者の夫婦に実の子のよう…
仮想世界で生きる人間たち アメリカ リー・ワネル監督 近未来、妻と幸せに暮らしていたグレイ、二人は自動運転の車が横転する事故にあう。そこに4人組の男が現れ、妻とグレイを撃ち殺す。ところがグレイは奇跡的に命を取り留めた。しかし脊髄に損傷をうけ四…
この世に病はひとつ・・それは貧乏 中国 ウェン・ムーイエ監督 2002年、上海、薬屋を営むチョン・ヨンは家賃も払えず、妻にも見放され、幼い息子の養育権もとられそうな貧しい暮らしだった。 ある日、スイス製の白血病薬グリニックと同じ効き目のインド…
アーニャはまだか イギリス、ベルギー ベン・クックソン監督 1942年、ピレネー山脈の麓、小さな村レスカン、13歳で羊飼いの少年ジョーは山の中でユダヤ人の男ベンジャミンと出会う。 彼は収容所に送られそうになり、幼い娘アーニャと義母オルカーダの…