リトルハンガーとグレートハンガー
韓国 イ・チャンドン監督
原作は村上春樹の短編「納屋を焼く」
アルバイトで暮らしている小説家志望のジョンスは偶然、幼なじみの女性ヘミと出会う。アフリカに旅行に出かけるので留守の間、猫の世話をしてくれとヘミに頼まれる。人のいいジョンスはそれを引き受ける。
やがて旅行から帰ってきたヘミはアフリカにはリトルハンガーとグレートハンガーがいると言い、それを奇妙な踊りで表現する。リトルハンガーとは食べ物に飢えている人、グレートハンガーとは生きる意味に飢えている人だという。
ヘミはグレートハンガーだった。
ヘミはアフリカで知り合った金持ちのベンをジョンスに紹介する。ヘミとベンはジョンスの田舎の家を訪ねる。夕景のなかでヘミは何かに憑かれたように踊りはじめる。
ベンは「役に立たなくなったビニールハウスを2か月に一度ぐらい燃やしている」そして「近々、この家の近くのビニールハウスを燃やす」という。
しばらくたってジョンスがいくら調べてみても、ビニールハウスは燃やされていなかった。ベンに訊くと「ジョンスにとても近いビニールハウス」を確かに燃やしたという。ジョンスはその意味が分からなかった。
やがてヘミと連絡が取れなくなる。彼女はカード破産者で家族とも絶縁していた。彼女が消えてしまってもベンは特に驚く様子をみせなかった。
若い男女の一風変わった青春物語がミステリアスなサスペンスへと変わってゆく。やがて破滅的な結末を迎える。
水面は静かで穏やかなのに水面下では渦が巻いているような映画で、どこか捉えどころのない魅力があった。