自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

イルマーレ(オリジナル韓国版)2000年

映画は虚と実の間にある

韓国 イ・ヒョンスン監督

1997年12月、海辺の家に越してきたソンヒョンはその家を「イルマーレ」と名付ける。イタリア語で海という意味だった。郵便受けに見知らぬ女性ウンジュからの手紙が入っていた。

信じられないことに彼女は2年先の1999年にイルマーレに住んでいたという。返信をだすとまた手紙が届いた。

二人はお互いに悪戯かも知れと思うが、ウンジュの手紙に1998年1月9日に大雪なると書かれており、その日、確かに大雪になった。なんと2年間の時間のズレがあったのだ。ウンジュとソンヒョンは不思議に思いながらも郵便受けを通じて文通を続ける。

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いつしか二人はひかれあい、2000年3月11日にサンゴ礁の砂浜で会う約束をする。その日はウンジュにとっては一週間後だが、ソンヒョンにとっては2年先のことだった。約束の日、二人が出会うことはなかった。

 

抒情詩とでもいうべき美しい風景が印象的で、どこか淡い水彩画を思わせる映画だった。二人が心を通わせていくストーリーが心地よく、イルマーレを舞台に過去と現在(あるいは現在と未来)の場面展開が巧みだった。

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ラストシーンがファーストシーンだった。でも以前のファーストシーンとは少し違う。1999年12月、イルマーレから引っ越しをするウンジュの前に見知らぬ男が現れる。

「どなた」「これから僕がする話、信じてくれる?」男はソンヒョンだった。

 

今までの物語をすべて「上書き」するような不思議感に満ちたステキな映画だった。