自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

運命を分けたザイル 2003年

垂直の氷壁を登る

イギリス ケビン・マクドナルド監督

1985年、イギリスの登山家、25歳のジョー・シンプソンと21歳のサイモン・イェーツはペルーのアンデス山脈のシウラ・グランデに挑んだ。

前人未到の西側は垂直に立ち上がり、頂上は雲に隠れて姿がみえない。しかし二人は世界初の登頂に成功する。

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遭難の80%は下山の途中に起こると言われる。ジョーが足を滑らし、ザイル一本で宙づりになってしまう。

サイモンがザイルを切らなければ二人とも命を失う。切ればサイモンだけは助かる可能性があった。どちらにしても二人が生還できる可能性はわずかだった、

サイモンはザイルを切り、ジョーは墜落してゆく。

 

アンデス山脈で撮影が行われ、当時の遭難状況をほぼ完全に再現した。あたかも目の前で起こっているかのような再現映像はとても緊迫感があり、私たちはただただ固唾をのんで見守るだけだ。

もちろん役者が二人を演じているのだが、まるで実際の遭難に立ち会っているかのようだった。

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巨大クレパスに落ちたジョーが基地のテントに奇跡の生還を果たすというだけの物語だが、そこには波乱にとんだドラマがあった。

 

サイモンはザイルを切ったことで世間から非難されたが、ジョーはそれを「当然のことをしただけ」とサイモンを擁護した。

ジョーの著作「死のクレバス アンデス氷壁の遭難」がこの実話に基づいた映画の原作となった。ジョーは生還して2年間で6度の手術をうけ、今も登山家として活躍している。