自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

洲崎パラダイス赤信号 1956年

かけ、もり、が25円の時代

日本、川島雄三監督

昭和30年頃、勝鬨橋、甲斐性なしの義治と着物姿の蔦枝は持ち金もなくなり、どこに行こうかと迷っていた。

「これからどうするの」「どうしようか、どこに行こうか」二人はバスに乗って、洲崎で降りた。そこには遊郭、洲崎パラダイスがあった。蔦枝はかつてここの娼婦だった。

洲崎橋を渡るとそこは遊郭だった。橋を境にして赤線と堅気の世界とに分かれていた。二人は橋の手前の小さな飲み屋「千草」の女将お徳に働き口を頼む。蔦枝は「千草」で働き、義治は蕎麦屋「だまされや」の出前持ちになる。

客あしらいのうまい蔦枝はラジオ屋の落合に近づき、一緒に寿司を食べ、洲崎天神内の小屋で芝居を楽しむ。義治は嫉妬に狂い、町の中をさまよう。

 

一方、お徳は遊郭の女と駆け落ちをした亭主が帰ってくるのをひたすら待っていた。

貸しボート屋、裏通りの飲み屋街、下町の商店、仕舞屋、電気街、昭和30年代の町の佇まいが見事に映し出されていた。

 

浮草のような暮らしを続ける男と女の腐れ縁を描いた風俗映画だったが、どこか文芸作品の香りがする大人の物語だった。時代を駆け抜けた男と女の息遣いが聴こえてくるいい映画だった。