自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

親愛なる同志たちへ 2020年

30年間、封印されていた3日間の出来事

ロシア、アンドレイ・コンチャロフスキー監督

スターリン亡きあとのフルシチョフ政権下、1962年6月1日、ソビエト連邦、ノボチェルカッスクの機関車工場で大規模なストライキが発生した。

労働者たちが物価高騰や給与カットに抗議の意思を示したのだ。市民たちは「スターリンの時代は物価が下がったのに」と不満だった。

党の指導部は、スト鎮静化と情報遮断のために現地へ高官を派遣。そして翌日、KGBの狙撃手が5000人のデモ隊や市民を無差別に銃撃した。

国家に忠誠を誓ってきた女性の市政委員リューダは暴動をおこした労働者たちの厳罰を求めた。しかし彼女の娘18歳のスヴェッカが行方不明になっているのを知り、リューダは娘の行方を捜す。

 

軍は事実が外に漏れることを怖れて電話や往来を遮断し、市民には守秘義務を課した。そして記憶を消すために血の流れた広場でダンスパーティを開いた。

共産党員で祖国を信じていたリューダは「スターリンが恋しい」「共産主義以外の何を信じればいいの」と言い、最後に「これから必ず良くなる」と未来に希望を託した。

 

スターリン批判のフルシチョフスターリン信奉のプーチン。ロシア文化庁公認映画ということにどのような「思惑」があるのかは分からないが、それでも映画は「思惑」を超えてゆく。実に興味深い作品だった。

ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞