自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

アカシアの通る道 2011年

アルゼンチンの「道」

アルゼンチン、スペイン、パブロ・ジョルジェッリ監督

木材を運ぶ長距離運転手のルベンは上司の依頼で仕方なくシングルマザーのハシンタをパラグアイから国境を越えて、アルゼンチンのブエノスアイレスまで送ることになる。ハシンタは従妹に仕事を紹介してもらうためだった。

彼女は5か月の娘アナイを連れていた。父親はいないと言う。ハシンタは赤ちゃんのオムツを替え、ミルクを飲ませる。

寡黙で不機嫌なルベンはタバコをふかし、水を飲む。しかし赤ちゃんのあどけない顔を見ているうちに、次第に母子と打ち解けてゆく。旅の途中で一緒に川を眺める。彼女は何処かに電話をし、なぜか涙を流していた。ルベンはそのわけを聞かなかった。

ハシンタが従妹の家に到着するとたくさんの家族に温かく迎えられる。その光景をルベンは羨ましく眺める。彼は8年も息子に会っていないという。

 

2日間の旅だったが、ルベンはハシンタや赤ちゃんと別れるのが辛かった。そして躊躇しながらも思い切って、ある言葉をかける。ルベンは恋をしたのだ。

 

シンプルすぎるほどのロードムービーだった。少ないセリフのなかに二人の境遇と心の揺れが伝わり、そして水のように心の中に沁み込んできた。

カンヌ国際映画祭カメラドール賞