アメリカン・ドリームという幻影
1950年代のニュージャージー州の小さな港町、レストランを経営しているイタリア移民の兄弟。兄プリモは頑固な天才肌のシェフ、アメリカン・ドリームを夢見る弟セコンドは営業と経理を担当している。
しかし経営は行き詰っていた。アメリカ人の好みに合う料理を出していなかったからだ。借金を返済しなければレストランは銀行に差し押さえられる。
同じ移民でイタリアレストランを経営しているパスカルの店はいつも盛況だった。セコンドはパスカルの勧めで有名な歌手のレオ・プリマを招待して、パーティーを開く。
優雅で夢のような「バベットの晩餐会」に比べると「リストランテの夜」は切実でリアルな物語だった。パーティーでは野菜のスープから始まって、リゾット、鳥の香草焼き、ブタの丸焼き、そして郷土料理のティンパーノが出される。
招待客は料理を味わい、至福の歓びで陽気になって踊り出す。
しかし現実は厳しく、プリモはイタリアを離れたことを後悔し、「俺にとってアメリカは地獄だ」と叫ぶ。アメリカン・ドリームはなかった。
パーティーが終わった朝、プリモとセコンドがキッチンでオムレツを食べるシーンには一抹の寂しさがあった。しかし希望もあった。