自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

悪魔のような女 1955年

有名シェフが腕によりをかけてつくりあげた特別料理

フランス、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督

 パリ郊外の寄宿制の小学校、校長のミシェルは妻クリスティナの財産で学校を経営していた。彼には女教師ニコルという愛人がいた。ミシェルは吝嗇で傲慢な男だったので、妻クリスティナと愛人のニコルは共謀して三日間の休暇を利用し、ミシェルを殺そうとする。二人はミシェルをバスタブで窒息死させ、小学校のプールに沈める。

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ところがプールの水を抜くと死体は消えていた。死体はどこにいったのか。その上、一人の生徒が死んだはずの校長を見たという。繊細で心臓の弱いクリスティナは恐怖で気が狂いそうになる。そこに私立探偵フィシェがあらわれ事件の謎を解き明かそうとする。

 

光と影だけのモノクロ映像が心理的な不安を膨らませて、クリスティナの繊細な神経が徐々に壊れてゆく。これから何が起こるのだろうかとゾクゾクさせるクルーゾー監督の名人芸が、映画の面白さを充分に堪能させてくれた。 

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最近のトリッキーな映画を見慣れている私たちは、途中で結末を予想できるだろう。しかしそれを上回る不思議な結末が待っている。その不思議な結末は私たちをこの映画はサスペンスなのか、それともホラーなのかと迷わせる。

 

ラストにあっと驚かすだけの映画はたくさんあるが、重要なのはそこに至るまでの物語の運び方や演出だろう。ファストフードのような映画もあればじっくりと煮込んだシチューのような映画もある。「味わう」ことの出来る映画は料理と同じように私たちに大きな満足を与えてくれる。

 1996年、シャロン・ストーンイザベル・アジャーニ主演でリメイクされた。