まるで絵葉書のような
1957年、紅葉の美しい季節、コネチカット州ハートフォード、夫フランク、二人の可愛い子どもたちと暮らすキャシー。裕福で理想の家庭、理想の夫婦として新聞にも取り上げられるほどだった。
キャシーは庭師のレイモンドと親しくなるが、彼は黒人だったために町の噂の的になる。パーティや町民の間ではその噂話で持ちきりだった。その上、夫フランクがゲイだということがわかる。あっという間にエデンの園のような家庭はガラガラと崩れてゆく。
白人のキャシーと親しくなった黒人レイモンドの家に石が投げ込まれる。しかしそれは白人からではなく黒人からだった。「白人も黒人も同じようなことをする」とレイモンドはキャシーに話す。それが違う世界に関わった代償だった。
離婚した夫は若い男と暮らし始め、レイモンドはこの町を去ってゆく。二人の最後の言葉は同じだった。「さようならキャシー」
いつしか美しい紅葉の季節が終り、冬が過ぎ、桜の季節になっていた。
キャシーはこの町で「エデンより彼方へ 永遠に輝く場所を見つめて」新しい生き方を探してゆくだろう。決して暗い終わり方ではなかった。
ダグラス・サーク監督「天はすべて許し給う」1955年へのオマージュ作品だが、それに人種差別、同性愛といった現代的な視点を盛り込んでいる。
町の風景、衣裳、紅葉の鮮やかさ、室内装飾など50年代を彷彿とさせるノスタルジックな映像が美しい作品だった。そして余韻が心に沁みるいい映画だった。