自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

チワワは見ていた 2012年

魔法瓶の中の魔法

アメリカ、イギリス ショーン・ベイカー監督

ロサンゼルス、チワワと暮らすポルノ女優のジェーンは同じ仕事の友人メリッサとその恋人マイキーの家に同居していた。

ジェーンは母親に旅費をだすから「会いに来て」と電話をするが断られてしまう。母親はジェーンがポルノ女優なのが恥ずかしいのかもしれない。でもジェーンはいつか有名女優になることを夢見て、今の仕事に一生懸命だった。

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ある日、ジェーンはガレッジセールで古い魔法瓶を買う。ところがその中に、1万ドルが入っていた。黙っていようと思ったが、気がとがめたジェーンは売り主の老婦人セイディに返そうと訪ねる。ところがセイディは返品だと思って受け付けなかった。ジェーンは言いそびれてしまう。

それでもジェーンは偶然を装ってセイディに近づく。最初は不審がられていたが徐々に親しくなってゆく。

 

セイディは数十年前に夫を亡くし、子どももいなかった。生活に困ってはいないが、一人ぼっちで毎週土曜日のビンゴ大会だけがたのしみだった。

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ジェーンはパリにあこがれていたセイディをパリ旅行に誘う。空港に向かう途中、セイディは夫の墓参りをしたいと言い出し、ジェーンに夫の墓に花を供えるように頼む。

夫の墓石の横にはもう一つ墓石があった。ジェーンが何気なくその横の墓石の名前を見た時、ジェーンはセイディの過去を知り、信じられないという驚いた顔をする。ジェーンの美しい金髪が風に揺れている。このシーンのために映画を撮ったのではないかと思わせた。

 

心温まるドラマでもなく、単にポルノ女優の仕事を面白おかしく描いた作品でもない、ハートフルなコメディだった。カラッと晴れた初夏の空を思わせる映画。

原題は「Starlet」、犬の名前でスターの卵(新進女優)の意味もある。