自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ラスト・ディール 2018年

「男の肖像」この男は誰なのか

フィンランド クラウス・ハロ監督

ヘルシンキ、老美術商のオラヴィはギャラリーの経営がうまくいかず、店じまいをしようとしていたが、もう一度だけ名画にかかわりあいたいと思っていた。

一人娘から補導歴のある孫息子のオットーを職業体験のためにしばらく預かってほしいと頼まれる。一度は断るがやむなく店員として預かり名画のすばらしさを教える。

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オラヴィは内覧会で見つけた一枚の絵画に引き付けられる。それは作者不明の「男の肖像」だった。オラヴィは「人生を全うした者にしか描けない絵だ」と言うが、サインがないので誰の作品かわからなかった。

孫息子のオットーとともにその絵の流出先と作者を探し始める。やがてそれはロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの「キリスト」だということが分かる。誰もそのことに気づいていなかった。しかしなぜサインがないのかはわからなかった。

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オークションでオラヴィは一万ユーロで競り落とすがお金がなかった。銀行に断られ、娘に金の無心をすると「何度泣かせるの」と言われ拒否される。オラヴィは今まで、苦しんでいた娘を支えることなく、ガラクタの絵画に夢中になっていたのだ。

 

最後の大勝負に敗れ、何もかも失ったオラヴィはレーピンの「キリスト」になぜサインがなかったのか、その意外な理由を知る。

 

老美術商と一人娘、孫息子との絆をミステリータッチで描いたヒューマンドラマで、私好みの一本だった。

 

クラウス・ハロ監督には恩赦をうけた女性服役囚と盲目の牧師の物語「ヤコブへの手紙」、エストニアを舞台にフェンシングの元選手と子供たちの絆を描いた「こころに剣士を」という感動的な作品がある。