自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

天然コケッコー 2007年

カラフルな水彩画

日本 山下敦弘監督

山と海に囲まれた自然豊かな村、中学二年生の石田そよは小学生と中学生をあわせても6人だけという学校に通っていた。

そこに東京から転校生がやってくる。都会の雰囲気をもった大沢広海という中学二年生の男子だったが、どこかとっつきにくい。でもいつしかそよは広海に淡い恋心を抱くようになる。

特に事件や大きな出来事が起こるわけでもなく、そよが高校生になるまでの二年足らずの物語。

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そよは広海のお洒落なコートが欲しくて「そのコートをくれたらチューしてもいいよ」ともちかける。

 

身投げのあった橋に供えられた花、夏草の生い茂る山道、静かな浜辺での海水浴、お囃子の聴こえる夏祭り、憧れの都会ファッション、神社での初キス・・自分の中学生時代もこうだったと、懐かしく思い出す人もいるだろう。

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神社、夏祭り、海水浴そんな言葉を聞くだけで中学生時代の記憶がよみがえってくるかもしれない。記憶はどんどん美化されて、やがてカラフルな水彩画になる。

思い出とはそのようなものだろう。

 

爽やかな夏の朝を思わせる田舎の暮らしと、そよ役の夏帆の初々しさがこの映画を限りなくカラフルなものにしている。名作、傑作というのではないが、ノスタルジックな気分にさせてくれるいい作品だった。