忘れられないひと言がある
ずいぶん前のことだけれど、遠く離れて暮らす友人と久しぶりに会い、曽根崎のオールドバーで懐かしい話とウィスキーで愉快な時間を過ごした。
再会を約束して梅田駅のホームで彼と別れた。しばらくするとその友人が追いかけてきて「握手をしよう」と手を差しだした。私は一瞬、驚いたがしっかりと握手をした。今でもそのひと言を覚えている。
作家、詩人、民芸店店主のねじめ正一が小学校3,4年生のころ、父親に「うちは何でこんなにお金がないの」と訊いたことがある。
そうすると父親は真っ赤になって「貧乏はオレのたったひとつの自慢なんだ。金は医者の治療代があるだけでいいんだ。よけいな金なんか持っていたってしょうがない」と怒った。
後年、ねじめ正一は自分の子供にあのような印象ある言葉をきちっと残せるだろうかと思った。
ちなみに私の自慢は・・・・ない。だから「貧乏はオレのたったひとつの自慢だ」と言ってみたい気がする。どこかハードボイルドのようでかっこいいではないか。