もう一人の「フーテンの寅」
日本、西川美和監督
１３年の刑期を終えて出所してきた殺人犯三上、彼は人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた。身元引受人の弁護士庄司の助けを借りながら社会に復帰しようとする。
テレビディレクターの津乃田は三上が子供の頃にわかれた母親を探し、更生しようとする姿をドキュメンタリー番組にしようとする。
三上は懸命に堅気になろうとするが、正義感の強い三上は怒りや暴力を抑えきれなくてトラブルを起こしてしまう。堅気にはヤクザとは違うルールがあった。
三上の前にスーパーの店長や弁護士庄司夫妻や津乃田といった彼をサポートする人たちが現れる。兄弟分のヤクザの女房からは「堅気は我慢の連続よ、だけど空が広い」と諭される。
映画「竜二」で竜二はヤクザに嫌気がさして堅気になるが、堅気の生活のあまりのつまらなさにまた元のヤクザにもどる。ある人たちにとってヤクザの世界には怖いほどの魅力があるのだろう。その上、堅気の世界には元ヤクザの居場所はほんのわずかしかない。
幸運にも三上は介護施設での仕事に就く。施設でいじめられていた知的障碍の少年を助けると、少年はお礼に「コスモスを持っていく」と差し出す。コスモスに少年の心情を見た三上は、生まれて初めてこの世界はすばらしいと思う。
別れた妻から電話があり、三上は堅気の世界で自分の居場所を見つけた。
「おもしろうて やがて悲しき」物語だった。
