憑依という精神障害
韓国、キム・ドヨン監督
ソウル、育児や家事に協力する優しい夫と2歳の娘と何不自由なく暮らす妻のキム・ジオン、彼女は30代の女性で出産を機に会社をやめて専業主婦になった。
妻として母として忙しい日々を送っていたが、ふと閉じ込められたような気持ちになる。すぐに腹が立ち憂鬱になる。その上、ジヨンは母や祖母が乗り移ったかのように突然、別人格になる時がある。彼女にその記憶はなかった。
夫は怖くてそのことをジヨンに話すことができずに精神科医に相談するが、本人を連れて来るようにと言われる。
周りの人たちからは専業主婦は気楽な身分だと嫌味を言われる。ジヨンが少女のころ、バスで痴漢にあうが、父親に「スカートが短い、お前が不注意だからだ」と怒られる。
男尊女卑の社会で育った少女期の心的外傷が癒えていなかった。現在の性差別と過去の心的外傷が彼女の精神を狂わせる。
ジヨンは以前に勤めていた会社の女性チーム長が男社会に嫌気がさし、独立し起業したと知る。ジヨンが彼女に会いに行くと、一緒に仕事をしようと誘われる。
夫もジヨンが仕事に復帰できるように一年間の育児休業を取ってもいいと言う。しかしここでジヨンは初めて自分が別人格になるという精神障害を知り、精神科医の治療を受ける決心をする。
男も女もこの切実なリアリティのある映画に引き込まれてゆく。見ごたえのある作品だった。