自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

けんかえれじい 1966年

軍靴と十字架

1966年、日本、鈴木清順監督、新藤兼人脚本

 昭和10年(1935年)、備前岡山第二中学の南部麒六(キロク)は喧嘩の達人「すっぽん」から喧嘩の極意を教わる。しかし軍事教練の教官と衝突して会津若松の喜多方中学へ転校する。そこでも喧嘩に明け暮れる毎日だった。彼の憧れの女性、道子は修道女になるという。

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薄暗いカフェで流行歌のレコードを聴く女給のけだるさ、新聞を読んでいた中年男の不敵な笑み、麒六はその男を忘れることが出来なかった。

東京では2・26事件の反乱軍兵士たちが道子を押し倒して、早朝の雪の中をザックザックと駆けてゆく。雪道に落ちた道子の十字架が軍靴に踏まれていく、このシーンは秀逸だった。

2・26事件で東京は戒厳令下にあった。駅で事件の号外を読んだ麒六はカフェの不敵な笑みの男が2・26事件の思想的指導者、北一輝だと知り「東京へ行くぞ」と汽車に乗る。煙をあげながら汽車は一路東京を目指す。

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大不況で国民が困窮し、青年将校たちが反乱をおこし、政府高官たちが殺害され、政治が大きく揺れ動く時代だった。やがて日本は軍部の発言力が高まり、戦争という「大きな喧嘩」に突入してゆく。

戦争前夜の時代、バンカラ学生の喧嘩に明け暮れる青春をコメディタッチで描いた映画。