なぜかノスタルジー
アメリカ タイカ・ワイティティ監督
第二次大戦末期のドイツ、10歳のジョジョは美しい母ロージーと暮らしていた。父はイタリア戦線で戦っていると聞かされていた。ジョジョは「ヒトラーユーゲント」の団員として毎日訓練に励んでいたが、本当は優しくて臆病な少年だった。彼には空想上の友達「アドルフ・ヒトラー」がいた。
ある日、偶然、家の中に隠れていたユダヤ人の娘エルサを見つける。母のロージーが彼女を匿っていたのだ。
大人の目線ではなく10歳の少年の眼からみたナチズムはまるでファンタジーがコメディのようで、なぜかノスタルジーを感じてしまう。
母と踊るジョジョ、ユダヤの少女と踊るジョジョ、この二つのシーンがとてもよかった。
ジョジョ「自由になったら何をするの」エルサ「・・踊るわ」二人のこの会話が最後に生かされる。
ビートルズの「抱きしめたい」の曲で始まり、最後はジョジョとエルサが身体を軽く揺らし、それが徐々に自由になった喜びのダンスに変わってゆくシーンで終わる。この見事なラストシーンが映画のすべてではないだろうか。
エンディング・ロールに流れるリルケの詩「すべてを経験せよ、美も恐怖も、生き続けよ、絶望が最後ではない」
26年前の今日、阪神淡路大震災があった。いつの時代も「絶望が最後ではない」といえるのではないか。