自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

シェイクスピアの庭 2018年

すべてのものは塵にかえる

イギリス ケネス・プラナー監督

1613年、「ヘンリー八世」を上演中のロンドンのグローブ座が大火災で焼失した。49歳のシェイクスピアは断筆し故郷ストラッドフォードの家族のもとに帰る。

そこでは妻アンと長女スザンナ、次女ジュディスが暮らしていた。息子のハムネットは疫病のため11歳で亡くなっていた。詩の才能があったハムネットをシェイクスピアは深く愛していたので、彼のために庭を作り始める。

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しかし20年以上も故郷を離れていたためシェイクスピアと妻や娘たちの間には冷ややかな空気が漂っていた。ロウソクと暖炉の灯りだけの部屋で、家族たちの刺々しい会話が始まる。そのセリフと映像はまるで当時を再現したようだった。

 

ジュディスはハムネットが父の期待に応えようといつも怯えていたと話す。そしてハムネットの死の真相を明かすとシェイクスピアは呆然とする。

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17世紀初頭のイングランドは知識も財産も男だけのものであり、息子が学校に行っている間、娘は台所にたつしかなかった。妻アンと次女ジュディスは文字を書くことができなかった。

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パトロンだったサウスサンプトン伯爵から「国王の次に偉大な人物」と称えられたシェイクスピアは分相応の恵まれた人生を送る。しかし後年、シェイクスピアの血筋は絶えてしまい、すべてものは塵にかえった。

 

シェイクスピア晩年の3年間を格調高く描いた物語で「悲劇」ではなく、400年前の家族ドラマだった。