自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

春にして君を想う 1991年

アイスランドの静謐な風景

アイスランド、ドイツ、ノルウェー

フリドリック・トール・フリドリクソン監督

アイスランドの北部、妻を亡くした78歳の農夫ソウルゲイルは生活に疲れ果て、愛犬を銃で殺し、思い出の詰まった家族写真や古時計を抱え、寒風の吹く土地を去ってゆく。

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首都レイキャビクにすむ娘夫婦のところを訪ねるが、騒がしくてここには住めないと思い、老人ホームに入る。

そのホームで幼なじみの79歳の女性ステラと再会する。ステラは故郷の島で死ぬことを望んでいた。二人は老人ホームを抜け出し、預金をすべておろし、車を盗み、故郷へと向かう。そして二人は故郷の島に渡る船に乗る。

船上から故郷の島をみると若い女性が手を振っている。驚いた二人に船長は平然と言う「ただの幽霊だ」

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故郷は無人の建物があるだけの土地になっていた。しかしそこはまるで妖精が住んでいるかのような美しい自然と透き通る詩情にかこまれた島だった。

 

ステラは若い頃の自分や仲間や島の人たちの幻影を見る。誰もが若く、元気に働いていた。何もかも昔はよかったとステラは懐かしく思う。もう言葉はいらない、ただ故郷への愛があるだけだった。

 

ステラは海辺で安らかに死に、ソウルゲイルは大自然の霧のなかに消えてゆく。二人はアイスランドの静謐な自然の中に溶け込んでゆく。天使が二人を見守っている。